え?ブラームスのピアノ協奏曲第3番?
ブラームスのピアノ協奏曲第3番とは?ひょっとして新発見?タイトルに惹かれて少し前(2月発売)の新譜を購入しました。これはクロアチア出身の若手ピアニスト、デヤン・ラツィックにより「ヴァイオリン協奏曲」のソロ部分をピアノに置き換え、カデンツァを自身の作曲としたものです。
さて、のっけから響くのは当たり前のことながら重厚なブラームスサウンドです。オケだけの前奏に続いて、いつものようにヴァイオリンの登場が・・・というところで力強く現れるのがピアノのフォルテシモです。違和感はほんの十数秒で、すぐにピアノ協奏曲の世界に入り込みます。ピアノ協奏曲2番とも相通じる推進力に溢れたリズムがむしろピアノとの相性を良くしているのでしょうか。カデンツァを経由して堂々とブラームスの音世界を造り上げます。
翻って、第2楽章ではやはりピアノの粒立ちよりもヴァイオリンの情感と香ばしさに軍配が上がります。オケへの溶け込みと浮き上がりを繰り返す、計算されたハーモニーの美しさはやはり弦楽器ならではのものです。
最終楽章のアレグロでは再びピアノが縦横無尽に活躍します。ここでも前進的なリズムが更にピアノを引き立てます。オケとのスリリングな掛け合いならばピアノ、サウンドとのハーモニーの妙を楽しむならばヴァイオリンかもしれません。
結論として、単なるキワモノに留まらない面白さですが、ピアノ協奏曲「第3番」を騙ることには不満です。ブラームスのピアノ協奏曲にはたった2曲だからこその尊さと不滅の価値があります。この曲はあくまでも「ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版」にとどめておくべきものでしょう。
ちなみに手元からお気に入り盤を選ぶと、「ヴァイオリン協奏曲」は若き独奏者の溌剌さを美しいオケが支えるムター・カラヤン・BPO盤(1980)、「ピアノ協奏曲1番」は瑞々しい独奏と躍動する管弦楽が掛け合いの妙を聴かせるツィマーマン・バーンスタイン・VPO盤(1995)、「ピアノ協奏曲2番」は身震いのするような完成度の高さでゼルキン・セル・クリーブランド盤(1966)です。
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