2011年6月14日 (火)

「レ・ミゼラブル(レミズ)」25周年記念コンサート

110615 実は、私は「隠れ」ミュージカルファンです。最近は舞台を観る機会もめっきり減って忘れかけていた頃に、NHK BSのトニー賞記念番組の一つとして昨年103日にロンドンで行われた主題コンサートの模様が放映されたのです。いやぁ、レミズに思い入れのある愛好者にとってはまさに垂涎ものでした。

1990年代の後半に度々ロンドンを訪れる機会があり、その度ごとに通ったのがウェストエンドの劇場街でした。その中でもとりわけロングランを続けていた「レミズ」のPalace劇場、「オペラ座の怪人」のHer Majesty’s劇場、「ミス・サイゴン」のDrury Lane劇場、「サンセット大通り」のAdelphi劇場には何度も足を運んだものでした。ロンドン発のミュージカルは豪華絢爛なダンスを中心としたブロードウェイ発に比べると、ドラマティックな物語内容と美しいメロディラインによって深い感動を与える点に特徴があります。シェークスピアを生んだ演劇の国ならではの作品群が多く、ひとつの作品へのリピーターが多いのも特徴でしょう。キャメロン・マッキントッシュというプロデューサー(レミズ、オペラ座の怪人など)、アンドリュー・ロイド・ウェバーという作曲家(キャッツ、オペラ座の怪人など)の存在も忘れてはなりません

それらの中でもとりわけレミズは日本を含む各国でのカンパニー公演を含めて、恐らく世界中で最も愛されているミュージカル作品ではないでしょうか?ビクトル・ユーゴーの原作に基づく波乱の物語がスピーディに展開し、シンフォニックあるいは心に染み入る楽曲群はいつまでも耳に残ります。演出は舞台の隅々での細かい動きに至るまで計算され尽くしており、見るたびに新しい発見があります。ここぞと思った時に鳴ってくれる音楽と心の琴線に触れる美しいメロディは何度聴いても新鮮で思わず涙腺が緩みます。

昔、パソコン通信時代にNiftyServeのミュージカルフォーラムでミュージカルナンバーの人気投票というのがありました。記憶では、その時の1位がミス・サイゴンからの「私の命をあげよう」で、第23位がレミズの「I Dreamed a Dream(夢破れて)」と「On My Own」であったように記憶しています(女性ファンが多かったのですね)。一昨年、スーザン・ボイルがイギリスのオーディション番組でセンセーショナルな話題をさらいましたが、その時の曲も「I Dreamed a Dream」でしたね。これら3曲はともにクロード・ミッシェル・シェーンベルグの作曲になるものです。彼は無調音楽のアーノルド・シェーンベルグの又甥になるとのことですが音楽内容は全く異なりますね。

ちょっとマニアックな話に入りますが、この25周年コンサートでファンティーヌ役を務めていたのがレア・サロンガで、10周年記念コンサートではエポニーヌを歌っていました。もともとマニラでのオーディションでキャメロン・マッキントッシュに見出され、ミス・サイゴンの主役に抜擢された新人歌手で、私も彼女の歌うエポニーヌには何回か感動を覚えたことがあります。エポニーヌ役が年齢を重ねるとファンティーヌ役を演じるようになるのは25年もロングランを続けるレミズならのことでしょう。

このミュージカルに触発されて、ユーゴーの原作(岩波文庫全4冊)を読んだのはそれほど昔ではありません。小さい頃に誰もが読んだダイジェスト版とは全く異なる世界がそこにはありました。ここで豆情報を一つ。原作ではガブローシュはテナルディエの息子(すなわちエポの弟)です。ミュージカル版ではそんな様子は全くないですね。

尚、この25周年を契機にレミズは新演出に移行するとのことです。すでにヨーロッパでは新演出によるツアーが始まっているようです。日本でも今月中に現演出での公演が終了するそうですね。映像を駆使し、よりリアルな舞台となるらしい新演出を早く見てみたいものです。

と、レミズについて語り始めたらキリがありません。ちなみに私にとってのミュージカル・ベスト3といえば、「サンセット大通り」、「レミズ」、「レント」なのです。その「レント」の舞台版を今夜、NHKで放映中です。録画版を後でゆっくりと楽しむことにします。

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2009年8月 4日 (火)

『ウェストサイド・ストーリー』@オーチャードホール

90804westside1_3 昨年、50周年を迎えたというブロードウェイ・ミュージカル『ウェストサイド・ストーリー』のワールドツアー日本公演が行われていましたので出掛けてきました(東京公演は89日まで)。

この作品そのものや含まれている名曲の数々はすでに映画でとても身近となっていますよね。僕らの世代にとっては何回見たのかが友人同士の間で自慢となるほど、この映画の登場は一つの事件であり、また心を揺さぶられた作品の一つでした。数々の名ダンス・シーンが目に焼きつき、とりわけジョージ・チャキリスやリタ・モレノの身のこなしには驚嘆し大いに憧れたものです。バーンスタインのシンフォニックでキレの良い音楽にも感動です。一方、何度も見るとヘンなことも発見してしまいます。ラストシーンでナタリー・ウッドのブレスレットがシーンが替わる毎に襟元から出たり入ったりしてしまうのです。これを知って以来、映画で泣くことは出来なくなりました(^^;)

10年ほど前、ロンドンでのリバイバル公演で初めて舞台に接しました。当たり前のことですが、映画と比べると遥かに臨場感と緊張感に溢れ、目の前で繰り広げられるシンフォニック・ダンスの迫力と舞台演出の面白さを大いに楽しむことが出来ました。今回の日本公演も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。ブロードウェイやウェストエンドの劇場と比べるとふた回りは広いオーチャード・ホールが迫力のあるダンス・シーンに揺れていました。

40年前の映画では度肝を抜かれたこの作品も、その後の諸作品(とりわけ、「キャッツ」、「レミゼラブル」、「オペラ座の怪人」といったウェストエンド作品の登場によってすっかり古典作品の一つとなりました。この夏、やはり来日公演が開始されようとしている「RENT」に比べるとさすがに色褪せてみえるかもしれませんが、それでもレナード・バーンスタインとジェローム・ロビンズ(振付け)によるこの作品の偉大さは永遠に不滅であり、これからも繰り返し上演が続けられていくことでしょう。若い世代にこそ舞台版をみてもらいたいものです。

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2009年4月19日 (日)

「スーザン・ボイル」@YouTubeと「エレイン・ペイジ」

すでに新聞(4/18日経夕刊)やネット上で話題になっているのでご存知の方も多いでしょうが、未聴の方はまず以下のYouTube映像を見てもらいましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=vMVHlPeqTEg

90419susan_2 これはイギリスの「Britains Got Talent」という素人オーディション番組に登場したスコットランド在住のスーザン・ボイルさんという「フツーの」オバさんです。47歳という年令に加え、外見とのギャップにより事前に審査員の揶揄と観客の冷笑を受けるのですがほんのワンフレーズの歌い出しだけで称賛へと一変してしまうのです。この数分間のドキュメントがYouTube上に掲載されてからのヒット回数は1週間で4300万回を超えていると言われています。彼女はすでにCNNにも登場し、CDデビューも予定されているとのことです。閉塞した社会におけるからこそのシンデレラのような奇跡がYouTubeというネット上の巨大な装置によってあっという間に世界中を駆け巡りました。

最初に審査員から「将来目標とする歌手は?」と訊かれたスーザンはすかさず「エレイン・ペイジ」と答えます(観客席からは失笑がもれます)。エレイン・ペイジといえば1980年代のロンドンウエストエンドにおいてサラ・ブライトマンと双壁をなすミュージカルスターでした。サラの特徴が声域の広さと声の美しさならば、エレインは歌の巧さの情感の表現で群を抜いていました。手元には以下の盤があります(自分も相当なエレイン・ファンだぞ(^^;)

<映像>

・「Cats」、1998年に舞台を映像化したもの。エレインは娼婦猫のグリザベラを演じ、名曲「Memory」を熱唱。

・「Andrew Lloyed Webber Celebrations」、エレイン、サラ、マイケル・ボールといったウェストエンドスターたちがロイヤル・アルバート・ホールに集合したコンサート

<CD>

・「Encole」、「夢破れて」を含むミュージカルナンバーを集めた名盤(下の写真)

・「Cats」、ロンドンオリジナルキャスト盤。エレインのグリザベラとオーディションに合格したばかりのサラのジェミマを聴くことが出来る。

・「The Collections」 

・「From a Distance

・「Romance and the Stage

・「Cinema

これらのCDはいずれもミュージカルや映画音楽からの抜粋が中心です。多くをロンドンのウェストエンド地区にある「Dress Circle」という知る人ぞ知る小さなショービズ専門店で購入しました(Websiteはここ)。ウェストエンドミュージカル観劇のついでに是非お立ち寄り下さい。

スーザンがオーディションで歌ったのは「レ・ミゼラブル」から「夢破れて(I Dreamed a Dream)」でした。もう20年近くも前のこと、PC通信のniftyserve内の「fmusical」というフォーラムでミュージカル曲の人気投票なるものがあり、1位が「命をあげよう(ミス・サイゴン)」、2位がこの「夢破れて(レミズ)」、3位は「オンマイオウン(レミズ)」であったと記憶しています。いずれも心に沁み入るようなウェストエンドミュージカルの名曲で、クロード・シェーンベルグ作曲による作品です。日本のミュージカルファンたちによっても支持されているこれらの曲は更にロイド・ウェバー作品も加えてイギリス人たちにとっては国民的誇りの対象でもあるのでしょう。スーザンが拍手喝采を浴びた理由のひとつには選曲もあったと思われます。

今回の出来事はひと時の話題に終わる可能性は大ですが、素晴らしい歌唱と感動的な瞬間を味わせてくれただけでも感謝です。

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2007年11月10日 (土)

EAGLES『LONG ROAD OUT OF EDEN』

71110longroad_2 イーグルスによる28年振りの新曲アルバムが発売されました。 イーグルスは軽快なカントリー&ロックのサウンドに乗って1970代に一世を風靡したバンドです。「Take It Easy」「Desperado」「New Kid in Town」「Hotel California」など多くの不朽の名曲を残しました。その絶頂期に一旦解散したものの、1994年に再結成ツアーを行い、その時の模様を収録したDVDHell Freezes Over」は実に感動的なコンサート映像となっています。

それから更に13年の時を経て、今回の2枚組新曲アルバムが発表されました。ドン・ヘンリー、グレン・フライといった団塊世代の中心メンバーは不変です。そして流れ出てくるのはあの懐かしいカリフォルニアサウンドでした。

実は自分にとってイーグルスが良いと思うようになったのはかなり後になってからでした。1970年代は主にクラシック音楽に傾倒しており、ロックやアメリカンポップスからは距離を置いていた時代でした。しかしカントリーだけは例外で、LP(当時は)を集めたり、米国出張を利用して聖地ナッシュヴィルのGrand Ole Opry Showを見に行くなど、かなり積極的でした。そして多くのカントリーシンガーの中でカントリー&ロックあるいはカントリー&ポップスと呼ばれるジャンルの中にいたのが今もなお大好きな歌手の一人、リンダ・ロンシュタットです。彼女が純粋カントリーシンガーともいえるエミルー・ハリスやドリー・パートンと共に美しいハーモニーを聴かせるアルバム「Trio」は今でも自分にとっては名盤中の名盤です。(リンダ紹介のページはここ

そのリンダ・ロンシュタットの三作目のアルバム「LINDA RONSTADT」(1972)のバックバンドとして集められたのがドン・ヘンリーら後のイーグルスのメンバーでした。リンダとの録音とツアーを終えてただちにイーグルス結成となったようです。以降のイーグルス、そしてリンダの活躍ぶりは言うまでもありません。

さて、今回の新アルバムも各人のソロをバックコーラスが支えるというイーグルス・サウンドが満載です。決して革新的という訳ではなく、政治的メッセージもありませんが、穏やかで軽やかなリズム、親しみやすいメロディ、美しいハーモニーとアコースティックな響きを基調としたサウンドは現代のロックシーンではほとんど味わえない安心感を与えてくれます。

次にはリンダとの36年振りのコラボレーションを期待したいものです。

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2007年6月10日 (日)

RENT @Broadway

今、ニューヨークにいます。数日前に到着して、これから帰国するというとんぼ返り出張です。久し振りのNYは相変わらず人の波ですが、治安は明らかに回復しており、南部や西部の大雑把で楽天的な巨大都市に比べると、この街はコンクリートの塊で出来上がっているにも拘らず、その雑踏がむしろ心地よく感じるのが不思議です。70608ny_1 高層ビル内で働くビジネスエリートたちと社会の底辺でその日を生き抜いている人々が妙に調和しながら混在している街です。

さて、予定していた仕事を終え、僅かな残り時間に早速出かけたのがタイムズスクウェア周辺です。現在上演中の主な作品は、ロングランを続けている「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「シカゴ」「ライオンキング」等々に加え、「Wicked」「The Pirate Queen」といった新作の看板が目を引いていました。後者はTVでも予告編を放映されていましたが、どこかで聴いたことのあるメロディだと思ったら音楽がBoubill & Shonberg、すなわち「レミズ」「ミス・サイゴン」のコンビです。音楽と美術、歴史上の題材であるところは同じコンビによる「マルタン・ゲール」にとてもよく似ているようでした。「マルタン」はとても好きな作品だったのですが、残念ながらロングラン上演とはなりませんでした。尚、この「The Pirate Queen」は以下のURLで一部を観ることが出来ます。

http://www.newyorkcitytheatre.com/theaters/hiltontheater/theater.html

結局選んだのはお馴染みの『RENT』です。この作品はWest Endで3回、東京での来日公演、加えて映画、DVDCD等ですでに目と耳に焼き付いている作品ですが、開演寸前でのチケットが容易に入手出来たことと、物語の舞台となっている街で観られるということで衝動買い(^^;)

作品については以前にも書いたので省略・・・。何度見ても感動的です。終演後もしばらくは席を立てません。客層のほとんどはリピーターと思われ、エンジェルやモリーンのパフォーマンスの場面では客席からやんやの喝采も飛び出し、会場全体がひとつになって盛り上がりをみせていました。70608rent_1

久し振りのミュージカルにとんぼ返りの疲れも少しは癒された出張となりました。来週末は東京で新国立の「ばらの騎士」です。楽しみ・・・。

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2006年11月11日 (土)

BEHIND THE MASK・・・サラ・ブライトマン

CATV240CH(ムービープラスHD)で『オペラ座の怪人・Behind the Mask』という番組を放映していました。所謂、メイキングビデオで、昨年公開された映画『オペラ座の怪人』を当チャンネルで数度にわたって放映するのに合わせて公開したものです。61111sarah

1時間強の番組は作曲者のアンドリュー・ロイドウェバー(ALW)、プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュたちのインタビューを中心にウェストエンド・ミュージカル『オペラ座の怪人』が如何にして出来上がったかというドキュメンタリーです。そして、何といっても興味深かったのが初代クリスチーヌ役のサラ・ブライトマンの映像です。

このミュージカルが当時のALWのパートナー、サラ・ブライトマンの存在があってこその作品であったことは番組内でも証言されており、試作段階でのサラの貴重な歌唱シーンが何度か登場します。また、劇場公開に合わせて作成された数種類のプロモーションビデオの一部も紹介されていますが、これらはかって国内でもLDで発売された「ロイドウェバー・コレクション」に収録されています(この素晴らしい映像集が何故DVD化されないのか不思議です)。これらの映像でのサラは美しい容姿と声でもって観る者を魅了します。「キャッツ」のジェミマ役でデビューし、ALWとの結婚、怪人でのヒロイン役とロンドンミュージカルの頂点に立っていた1980年代のサラは実に輝いていました。

その後、サラはALWとの離婚(音楽的パートナーとしての関係は維持されているようですが)、ウェストエンド舞台からの決別を経て、1997年の突然の「Time to Say Goodbye」の大ヒットにより再び脚光を浴びる世界に戻ってきました。しかし、年令のみならず、病的な激太りの影響もあってか、かっての面影はありません。クラシックやコンテンポラリーとの融合という新しいレパートリーに挑戦を続けており、その美声に魅せられた多くの新しいファンを獲得しましたが、ミュージカル女優・歌手としてのサラに思い入れを持つ者にとっては心から馴染むことは出来ません。サラ・ブライトマンにはやはりウェストエンドが似合います。

尚、下の拙HP(本館)にて私の所有するサラの映像、CDについて紹介しています(この数年間、更新していませんが(^^;))。ご興味があればお立ち寄り下さい。

http://www.d1.dion.ne.jp/~kawaiys/sub26.htm

また、「Behind the Mask」は11/2811/29CS240で再放映されます。

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