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2018年12月15日 (土)

『ファルスタッフ』 @新国立劇場

0c3112c5s_2 1シーズンに一回の新国立劇場、今回はヴェルディ『ファルスタッフ』でした。音楽も舞台も素晴らしく、ヴェルディ最後のエンターテイメント作品を大いに楽しむことが出来ました。なお、この公演のダイジェスト映像はここで観ることが出来ます。

まず特筆すべきは東フィルの演奏です。最初の一音から終音の残響まで、全く弛緩することのない極上の音の厚みと小気味の良いスピード感を味あわせてくれました。これまで多くの新国立劇場での演奏に接してきましたが、今回はとりわけ身体に直接染み入るような心地好い演奏です。ヴェルディの音楽そのものの力、オケ(東フィル)の性能に加えて、指揮者カルロ・リッツィの力量とイタリア人の血に拠るところが大きいのでしょうか。

もう一つの特筆すべき点は舞台美術とジョナサン・ミラーによる演出です。中世オランダ風の色調と幾何学模様はまるでフェルメールの世界です。部屋に置かれた小物類や窓から入る日差しの柔らかさなど、計算しつくされた美しさに目を奪われます。幾何学模様の床は遠近法が強調され、人物を小さく見えます。舞台を広く見せるためなのか、あるいは登場人物たちの矮小さを強調する皮肉の表現なのでしょうか?ストーリーはシェークスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」に基づくイギリス喜劇で、終始、楽しくユーモアと機知に溢れた物語を楽しむことができました。

 

出演者では4人の婦人たちの軽妙なハーモニーとコミカルな軽快な身のこなしが見事でした。オペラグラスを持参し忘れたため、アリーチェ役の美貌ソプラノ、エヴァ・メイの表情を見ることが出来なかったのが残念です。日本人歌手ではナンネッタ役の幸田浩子さんの美しい声に惹かれました。美しいアリアをあてがわれている得な配役ですね。

圧倒的な音の力で聴く者をねじ伏せるヴェルディの作品群の中でこの「ファルスタッフ」の軽妙さ、気張ることのない魅力は年齢とともに楽しめ作品であるような気がします。

 手元には2001年のミラノ・スカラ座による映像盤があります。R・カップッチョの演出はオーソドックスで、R・ムーティ(指揮)のオケは小規模ながら小気味の良い演奏を聴かせてくれます。当時は若手のB・フリットリ(S)、I・ムーラ(S)、JD・フローレス(T)らの出演が初々しいです。

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