映画 『日本と再生~光と風のギガワット作戦』
表題の映画を観てきました(渋谷のユーロスペースにて3/10まで上映中)。前作「日本と原発」に続く、河合弘之監督(脱原発弁護団全国連絡会代表)の新作品です。お馴染みの飯田哲也氏(ISEP所長)と共に、世界ならびに日本各地の現場と人々を訪ねながら、再生可能エネルギー利用の現状と展望を分かり易く紹介するものです(予告動画は以下)。
https://www.youtube.com/watch?v=U1Kc-8_infI
映像と解説によって世界の現状を目にすると改めて驚かされることばかりです。ドイツやデンマーク、更には中国で風力発電の風車が林立する光景は驚きそのものです。福島事故の当事者であるにも拘わらず、日本が原発に固執し、再生可能エネルギー普及に後ろ向きの政策をとり続けていた間に各国は風力と太陽光(熱)を中心とした再生可能エネルギー普及率の向上のみならず関連産業の育成にも大きな成果をあげていたのです。
ドイツの風車群は懐かしい光景でした。かつて2000年前後に長期滞在していたころ、ライン川沿いの丘陵地帯を頻繁に訪れましたが、視界の中には必ず風車群がありました。1986年のチェルノブイリ事故時に深刻な汚染に見舞われたドイツではいち早く脱原発と再生可能エネルギーによる分散型地域発電の普及に向けた取り組みが開始されていたのです。
一方、国内であっても、例えば、北海道のオロロン街道(留萌から稚内)沿いに並ぶ、また宗谷半島の丘陵地帯を埋め尽くす風車などは10年以上も前から壮観でした。しかし、その後の普及の速度はあまりにも遅かったと言わざるをえません。原発と石炭火力をベース電源と位置付ける限り、再生可能エネルギーによる発電産業や送電機能はその育成が阻まれ続けます。福島事故というあまりにも大きな犠牲を伴った教訓を生かしてエネルギー基本計画を根本的に見直さない限り、再生可能エネルギーの普及と関連産業の発展は世界の潮流からますます立ち遅れていくしかないでしょう。
映画の中で示されたデータで最も興味深かったのは世界の「風力+太陽光」と「原発」のトータル設備容量です。2000年以降、前者が急拡大し、2012年に逆転、2016年には前者が約400GW/h、後者が約800GW/hと自然エネルギーが原発の倍の容量を持つことになったのです(更に拡大中)。世界のすう勢はもはや明らかです。
私たちの列島は風、太陽、地熱、森、川の流れ、潮力といった自然の恵みに溢れています。それらの力を借りながら、一方で省エネルギーの実行と投資を進めることで、電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことは決して不可能なことではありません(その意味で、電力をがぶ飲みするリニア新幹線建設計画など愚策以外の何物でもないと思います)。
この映画は、再生可能エネルギー普及の現状と将来を知ることで、脱原発へのいっそうの確信、更には勇気と希望を与えてくれる作品です。一昨年、地元の「脱原発八千代ネットワーク」では「日本と原発」の自主上映会を実施し大好評でした。本作の自主上映もぜひ実現したいと思います。
最後に一言・・・エンディングに流れる坂本龍一さんのピアノ曲がとても心に染み入りました。
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