映画 『東学農民戦争~唐辛子とライフル銃』
1894年、朝鮮半島で起こった甲午農民戦争(東学農民革命)を掘り起こすドキュメンタリー映画を見ました(@在日韓国YMCAホール)。
「東学」は1860年に崔済愚(チェジェウ)によって創始された、人々の平等を強調した宗教思想で、貧困と差別にあえぐ人々の間に急速に広まりました。教祖の崔済愚は1864年に朝鮮政府(当時は李朝)によって処刑されましたが、その思想は後継者たちによって引き継がれていきました。
東学農民たちは1894年に全琫準(チョンボンジュン)を指導者として朝鮮王朝に対して蜂起し南部を席巻します。朝鮮政府は清国に援助を求め、一方、清国による朝鮮半島支配を嫌った日本は朝鮮政府の了解を得ずに約8000人を派兵し(清国側は1500人)、それが日清戦争の引き金になりました。東学農民軍はいったん朝鮮政府と和解したものの、日本軍侵攻に抗して再び起ち上がりましたが、反乱は圧倒的な武力の差により約5か月間で壊滅しました。東学の反乱を鎮圧し、日清戦争にも勝利した日本はその後、朝鮮政府を傀儡化し、日露戦争を経て、1910年の日韓併合へと至り、朝鮮の人々の新たな苦難が始まります。
映画は日本人である前田憲二監督による東学に関わった人々の子孫へのインタビューと関連する史跡の紹介が中心です。監督の執念ともいうべき記録へのこだわりが感じられますが、当時の写真や絵、資料など視覚に訴えるものが少ないのが残念でした。しかし、人々の記憶からも忘れ去られようとしていた歴史の一コマをこうして掘り返されることで日朝の歴史の暗黒部分に少しでも光が当てられればと思います。私も本棚に長い間眠っている「朝鮮近代史(渡部学、勁草書房)」や「日本近現代史③日清・日露戦争(原田恵一、岩波新書)」、「閔妃暗殺(角田房子、新潮社)」などのページをめくり返しています。
さて、「東学」は、幾多の苦難を乗り越えて、今も「天道教」として南北朝鮮半島の社会に根付いているとのことです。ネット検索すると「天道青友党」なる北朝鮮政党がヒットしたのには驚きました。ウィキペディアによれば韓国における信者は人口の0.1%以下とのことです。圧制下の土着信仰から始まり、同様に宗教弾圧を受けた日本の大本教と相通じるものがあるのでしょうか?
いろいろと興味の種はつきません。
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