「ビュフェ美術館」と「ヴァンジ彫刻庭園美術館」 @クレマチスの丘
例年、この季節恒例のお墓参り(御殿場の富士霊園)から少しだけ足を延ばし、富士の裾野に位置する「クレマチスの丘」を訪ねました。主目的は広大な施設の一角に佇む「ベルナール・ビュフェ美術館」です。約2000点にのぼる所蔵も見事ですが、開館が1973年(ビュフェ45才)というから、いくらビュフェが若くして成功を収めたとはいえ、その先見の明に驚かされます。昨年(2013年)は開館40周年ということで、館内は大きくリニューアルされました。1945年から1999年までの作品群を時代ごとに区切り、とても見易くなっています。2回目の訪問となりましたが、作品の量、質ともに圧倒されます。家にもどってからも、館内で購入した画集をめくりながら、ゆっくりと余韻に浸ることにします。
ビュフェ作品については改めて語ることもないでしょう。独特の細見姿、輪郭線、ひっかき傷のような黒い線、モノトーンの色調、劇画調の表情、等々の与える印象は強烈です。画家としての大成功と人気の一方で、ビュフェは71才で死を選びました。作品群からは不条理さや疎外感、虚無感、不安感がひしひしと伝わってきます。
ビュフェ美術館の隣には伊豆にゆかりの深い「井上靖文学館」が併設されています。前回訪れた時は「氷壁」の特集で、物語の素材となった1955年のザイル切断事件の裁判経過や実験結果などが展示されていました。旭川の井上靖記念館とともに、井上ファンにとっては、一度は訪れてみたい聖地のひとつだと思います。
この季節、「クレマチスの丘」にはその名前の通り、さまざまなタイプのクレマチスが咲いています(パンフレットによると200種、2000株と)。加えて、ライラック、藤、紫陽花、パンジーなど、この季節の花々が園内に咲き誇っています。そして、それらの木々や草花と見事に調和しているのが、「ヴァンジ彫刻庭園美術館」の屋外彫刻群です。彫刻芸術というものにはいま一つ共感を得ることが出来ないでいたのですが、ここに置かれている彫刻群はきわめて具象的であり、人間臭く、何とも心和むユーモアを感じさせてくれます。この美しい庭のベンチで、これらの彫刻群に囲まれながら一日中を過ごせたらとても豊かな気持ちになれそうです。
お奨めの場所です。
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