ドビュッシー・音楽と美術展 @ブリヂストン美術館
実に長い間、ブログをサボっていました。単なる、多忙と猛暑、気力の欠如が理由です。秋の気配と共に少しは更新頻度が上がればと思いますが・・・(他人事)。
さて、「ドビュッシー・音楽と美術 - 印象派と象徴派のあいだで」という企画展を観てきました(ブリヂストン美術館)。この猛暑日にドビュッシーはミスマッチだよなぁと思いながらも、たまには気分転換をと気力を奮い立たせて出かけました。生誕150年を迎えるドビュッシー(1862 - 1918)と、同時代の芸術家たちとの交流をテーマにしたものです。最近は、ありきたりの画家展や美術館展に捉われない、斬新な企画展が増えているように思えます。ましてや、このような絵画と音楽のコラボとはとてもユニークです。
ドビュッシーは、多くの印象派の画家たちの中でも、特にモーリス・ドニとは意気投合していたようで、ドニを知る展覧会としても面白いものでした。確かにドニの「木々の下の行列」(右上の写真)や「ミューズたち」からはドビュッシーの音楽が聴こえてくるようです。とりわけ、この二つの絵に共通する樹木の縦の線がドビュッシーの凛とした響きを連想させるのかもしれません。
私にとって、決して分かり易いとはいえないドビュッシーの作品は積極的には、特にそれ単独では聴きたい音楽ではありません。しかし、ニジンスキー振り付けによる「牧神の午後への前奏曲」(パリオペラ座「ディアギレフの夕べ」)の映像盤は衝撃的でした。音楽と振り付けが相俟って、とてつもなく美しく官能的な世界が現出していたのです。踊り手(ニンフ)たちは単純な横移動のみ、観客側には常に横顔を晒すことによって平面的な絵画の世界をそこに現出させようとしたのでしょうか?アドルフ・メイヤーの作なる初演当時のスケッチ(下)が展示されていました。
オペラ「ペレアスとメリザンド」も実に象徴性に富んだ作品です。手元にある1992年のウェールズ・ナショナルオペラ盤(ブーレーズ指揮)は舞台の美しさで際立っています。ソプラノのA・ハグリーがメリザンドの美貌、神秘性、無邪気さ、哀しさを見事に表現しています。残念ながら、他の舞台映像で満足できるものにはまだ出会っていません。この対話形式で進む叙事音楽劇はアリアとレチタティーボの区別が殆どなく、すなわち、旋律というよりは殆ど「語り」に近いものなので映像なしでは辛いものがあります。ただ、各幕間の間奏曲の美しさは比類のないものです。
ということで、ドビュッシーの音楽作品は、交響詩やピアノ曲がそうであるように、それ自体が絵画的であること以上に、舞台芸術と相俟ってこそ人々に鮮烈な印象を残すものといえるのでしょう。この展示会で紹介されているような、多くの芸術家たちとの交流がもたらした近代芸術の果実を優雅な気分で味わいたいものです。
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