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2011年12月16日 (金)

ストレステスト評価による危険な再稼働への道

111215st 全国54基の原発のうち、今日現在で稼働しているのは8基となりました。年内には更に定期点検対象が増え、6基となります。いよいよ実質的な脱原発社会が近づいています。一方で、ストレステストを巡る動きが慌ただしくなっています。事業者からの評価報告書は1028日の関西電力大飯3号機を皮切りに、今日までに7冊の報告書が提出されています(全て三菱重工製のPWR型)。

そもそも、ストレステストはフクシマの事故を受けて、EU理事会が傘下の14か国、143基の原発を対象として実施要請をしたことに始まります。それが日本では、一次評価を停止中原発の再稼働の条件としたことで矛盾や混乱が生じています。ストレストテストによる評価は、プラントの弱点の把握や改善のためのツールのひとつとして利用することは出来ても、所詮は机上のシミュレーションです。その結果は絶対的な安全評価結果を導くものではなく、それを稼働条件とすること自体に無理があります。

今回のテストはいわば、原発プラント破壊のシミュレーションを机上で行おうとするものですが、私たちは福島で大規模実物破壊を目の当たりにしたばかりです。その破壊の諸データを収集、解析、診断し、設計・製作の手法を検証することこそが優先されるべきです。特に、福島事故では津波による全電源喪失以前に地震動による破損が冷却材喪失事故に至ったという指摘があります(東電は否定していますが)。このことは、現行の耐震設計審査基準への疑問を投げかけると共に、その指針に基づく全原発の耐震安全性に疑義を生じさせるものです。地震列島上に存在する全原発の耐震バックチェックの厳重な見直しこそが優先されるべきだと思います。

現在、専門家による「ストレステストに係る意見聴取会」が開催されています(写真、今日までに4回開催)。保安院による筋書きの下、電力事業者の作成した報告書を原子力ムラの学者たちが補完して客観性を装うというお馴染みの仕組みですが、今回は井野博満氏(東大名誉教授)と後藤政志氏(元原子力技術者)という二人の市民派委員が参加していることにより様相が異なってきています。聴取会の場で多くの批判的意見が出され、テストを再稼働条件のひとつとすることへの不当性を明らかにする試みが続けられています。

審査の技術評価作業を担っている独立行政法人・原子力安全基盤機構(JNES)には多くの主建設契約者OBが勤務しています。大飯、伊方の評価作業においても主契約者であった三菱重工のOBが実務に携わり、かつ複数名が陪席者として意見聴取会にも出席しています。これでは公正さの欠如と利益相反が疑われても仕方がありません。129日に総務省「政策評価・独立行政法人評価委員会」から経産相に提出された「勧告の方向性」によると、JNESは「原子力事業者の出身者を多数採用しており、検査の中立性・公正性に疑念がある」、「検査対象を、出身元と関わりのない施設に限るべきである」と厳しく弾劾されています。彼らにテスト結果を審査する資格はありません。併せて、意見聴取会各委員についても電力業界からの寄付金、補助金等の受け取り有無について利益相反の視点より確認・公表すべきです。これらの意見、疑問に対する保安院からの回答は、これまでの審査の枠組みや姿勢を超えるものではなく、現時点では対立点を残したまま議論が続いています。

今後、推進側は他の原発の報告書を続々と提出することによって再稼働に向けた攻勢をますます強めてくるでしょう。意見聴取会で追及されている、ストレステストの欠陥や不当性を各市民団体や原発地域の人々と共有化することによって、再稼働阻止の運動が更に確固としたものになっていくことを願うばかりです。

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