『ドン・ジョヴァンニ』@METライブビューイング
2011-2012シーズンのMETライブビューイングが始まっています。2作目の「ドン・ジョヴァンニ」を見てきました(@東劇、先週)。さすがMETということで、実に立派で重量級のオケ、舞台、そして配役陣です。時代設定に忠実なオーソドックスな演出で、この作品に真正面から向き合っています。
この作品の持つ数々の美しいアリアを味わうには余計な装飾や奇をてらう演出が邪魔になることは、すでに多くの読み替え演出や現代演出で実証済みです(例えば、2006年のザルツブルグ音楽祭)。今回のようなオーソドックスな演出は作品そのものを味わうのにはとても相応しいものと言えるでしょう。
しかし、一方で新鮮味に欠けることも事実です。現代の聴衆や視聴者にとっての「ドン・ジョヴァンニ」は、物語そのものや登場人物たちの生き方などを正面から受け止めるためのものではなく、あくまでもモーツァルトの音楽を聴くための台本であり、舞台であると思います。そこで欲しいのが、読み替えや別解釈などには至らない、モーツァルトの音楽を損なわない程度の小さな洒落や遊び心なのです。例えば、2008年の新国立劇場での、背景をベネチアに移した演出、思わず笑みがこぼれるコミカルなエルヴィラ次女の登場、2001年チューリッヒ歌劇場映像盤でのそこここに見られる洒落た味付けとスピーディな展開、などが音楽の洒脱さを一層引き立ててくれました。
出演者たちに不満は全くありません特にBフリットーリ(S)をはじめ女声陣は、自分の役割を熟知しながら各人に与えられたアリアを堂々とかつ美しく、丁寧に歌いこんでいました。ドナ・アンナ役のM・レベッカ(S)の声の美しさ、ツェルリーナ役のM・エルドマンの初々しさも印象的でした。
男声陣とオーケストラには迫力を感じます。とにかく、真正面から挑んでくるようなで立派過ぎるドン・ジョヴァンニに、満足よりも満腹感を感じてしまった私は若干疲れ気味?
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