「脱原発依存」の表明 by菅首相
梅雨の季節から続く猛暑を言い訳にblogの更新もすっかり怠っていました。フクシマと原発関連の記事だけは辛うじて追いかけています。
今日は菅首相の「脱原発依存」会見がありました。ん?「反原発」でも「脱原発」でもなく、「脱原発依存」というヌルさは感じますが、今の首相の置かれている状況を考えれば精一杯の発言なのかもしれません。多くの提案や行動が後手に回り、それぞれが余計な憶測や政治の混乱を招きながらも、浜岡を止め、玄海の再稼働をストップさせ、世論の後追いとはいえ、為政者の代表として「脱原発」を宣言した菅首相の功績は評価したいと思います。
ただし一方で、浜岡は津波対策を条件とし、玄海はストレステストを条件とし、今回の脱原発発言の実現時期や工程は見えないままです。3.11を契機に日本社会全体が脱原発の方向に大きく舵を切り替えようとはしているものの、そのことはまだ端緒に過ぎず、現実に、日本列島の上には稼働中、停止中、試運転中も含めて54基の原発と、2基の高速増殖炉、2か所の燃料再処理設備、1か所の高レベル廃棄物処理設備と貯蔵設備を抱えており、これらを一つづつ確実に葬り去るまでには、大きな努力と労力を必要とします。加えて、フクシマ一つをとってみても安全な収束への見込みがついたものとはとても言えず、被災地からの避難や現場での被曝労働は今後も数十年にわたって続くことになります。
更に今後は「原子力村」や既得権益団体、人間の生存権よりも経済効率を優先する産業界、政局のみで動く反対派等々からの揺り戻しが考えられる中、今回の首相発言等に一喜一憂することなく、着実な世論と運動の形成を図っていく必要があります。
私事になりますが、長らく関わってきたプラントエンジニアリングを共通基盤とした脱原発運動体を作ろうとしています。私たちが関わってきたのは原発ではなく、主にエネルギーや化学プラントですが原発との共通点も多く、知見、経験をベースにしたメッセージの発信と共に、一市民としての責務も果たしていければと考えています。この分野での賛同者がいらっしゃいましたらメールにてご連絡下さい。
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コメント
私も元エンジニアとして、原子力には不案内ですが、発電プラントにはある程度の知識があります。
原発も、熱源の差を別とすれば、火力発電所と同じ構造です。
発電所が、外部系統(送電線)から隔離されたときに、どういう挙動を示すか、多少の知見があります。
そんな知識でもお役に立てればと思います。
投稿: 〇竹 | 2011年7月14日 (木) 22時58分
賛同者としては失格ですが、YASUさんの物事の捉え方には大いに共感を覚えます。辞めさせる、やめないの議論にしか登場しない人物が多い中で、我々がやるべき事を真剣に取り上げている報道は、本当に少ないと感じております。
明らかになりつつある、この大量の放射能をばら蒔いた責任を明らかにし、それを追求する中で、これからの方向性を決めなくてはと思います。
投稿: ご~けん | 2011年7月14日 (木) 23時19分
〇竹さん、
賛同ありがとうございます。発電所に加えて、タービン、ポンプ等への知見も期待しています。細かい話ですが、今回も圧力調整室の水量が少なく、異常時、すぐに温度上昇し、そこから水を汲み上げる緊急炉心冷却用ポンプのNPSHが不足した可能性もあるとか(2,3号機)。エンジニアリング的にもなかなか興味深い問題です。
投稿: YASU47 | 2011年7月15日 (金) 10時18分
ご~けんさん、
共感ありがとうございます。何でも辞める辞めないの政局に持っていく発言には本当に怒りを覚えます。今回の菅首相の声明に対しても、早速、中枢の岡田氏や枝野氏が後ろ向きの発言を行いました。まぁ、党内や政府内の合意がとれていた訳ではないのでやむを得ない面もありますが、揺り戻しの動きも半端ではなく、楽観は全く許されませんね。
投稿: YASU47 | 2011年7月15日 (金) 10時26分
YASUさん、記事の後半を修正します。
将来ある子供の被爆、そして牛肉、足柄茶などへの放射能の影響が大変心配です。大量の放射能をばら蒔いた責任も菅内閣なのか、あるいは東電だけか、また経団連か、自民党なのかをはっきりさせ、我々が取るべき方向性を決めなくてはと思います。
投稿: ご~けん | 2011年7月15日 (金) 14時20分
ご~けんさん、
もし、責任の所在を求めるのならば、やはり原子力利用を進めてきた「原子力村」の住人たち(電力会社、歴代政府、御用学者、利権獲得者・・・)でしょう。それを黙認してきた私たちの責任も勿論ありますが、「隠してきた」「批判を無視してきた」罪はそれ以上に大きいと思います。私たちは「知ること」と「賢くなること」で対応していきましょう。
投稿: YASU47 | 2011年7月15日 (金) 15時13分
YASUさん、了解しております。
責任の所在を追求していないように見えてしまうのが不思議なのです。現に事故が起きているのですから、何らかの追求が必要に思います。
マスコミとしても追求しにくい事情があるのかもしれません。スポーツ新聞や現代NETなどの偏向した記事が目に余ります。それに比べて6月初旬の東京新聞記事は素晴らしかったです。目が醒めるような内容でした。
投稿: ご~けん | 2011年7月15日 (金) 15時45分