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2011年6月19日 (日)

『ワルキューレ』@METライブビューイング

110617walcure ワーグナーの『ワルキューレ』はMETライブビューイングの2010-2011シーズンの幕切れを飾るのに実に相応しい作品です。幕間(ライブビューイングではインタビューや特典映像と休息)を含めると合計で5時間14分にもなる長時間上映ですが全く退屈することはありません。現代技術の粋を集めた舞台美術に目を奪われると共に、圧倒的な力で音楽が鳴り続ける至福の時間を味わうことが出来ました。

私は所謂ワグネリアンではありませんし、未だにワーグナー作品を「理解」出来ていません。どちらかというとモーツァルトやR・シュトラウスの「洒落」を好みますし、ベルカントに酔うことも出来ます。一方、ドイツ精神世界を舞台とする物語に共感を覚えることは難しく、「指輪」についても人間以上に俗っぽい神々に神性は感じられず、性格破綻者たちの織りなす破滅ドラマに憂鬱さは感じても悲劇性は感じられません。登場人物たちへの感情移入も適うことはありません。理解のためには一度、台本とじっくり向き合ってみる必要があるのかもしれませんが・・・。

しかし、観終わった後の満足感は他のオペラ作品群とは全く異なる大きさと深さをもったものとなります。何といっても壮大なスケールの音楽に圧倒されるのです。特に「ワルキューレ」は指輪シリーズの中でも際立って音楽性の豊かな作品です。前作「ラインの黄金」から引き継いだモチーフ群(ヴァルハラ城、魔の炎、剣など)に加え、多くの新たな動機(中でも「ワルキューレの騎行」は圧巻)が加わり、ジークムント、ジークリンデの兄妹が歌う「春と愛の歌」、父娘が別れるシーンでの「ヴォータンの告別」、「魔の炎の音楽」などは実に感動的です。

今回の舞台美術は前作「ラインの黄金」の技術をそのまま踏襲です。最初の驚きこそありませんが、巨大な板の集合体によるゴツゴツした岩山から美しい森までの表現はとても斬新で楽しめました。勇ましい「ワルキューレの騎行」をバックに8人の女戦士たちが滑り降りるシーンはさながら一大エンターテイメントショーです。そう、純粋に楽しめば良いのです。

出演者たちも素晴らしかったですね。役柄の好き嫌いは別として、B・ターフェル(ヴォータン)とS・プライズ(フリッカ)の存在感は圧倒的でしたし、イケメンのヨナス・カウフマン(ジークリンデ)は映像盤(バイロイト1980)でのペーター・ホフマンを彷彿させるようでした。なかでも、もはや肥満体から決別したD・ヴォイトの感情豊かでコケティッシュともいえるブリュンヒルデは妙な魅力に溢れていました。フレミングといい、ヴォイトといい、アメリカ出身の熟年ソプラノはますます元気ですね。

これで、ライブビューイングも半年間の休みです。途中で再上映の機会があれば、また見たいのは「ラインの黄金」とこの「ワルキューレ」です。ワグネリアンに近づいたとは思いませんが、「食わず嫌い」ではなくなりました。

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コメント

>フレミングといい、ヴォイトといい、アメリカ出身の熟年ソプラノはますます元気ですね。

世代が少し上ですが、ボニーもいますね。

フレミングは兎も角、ヴォイトというソプラノは良く知らないのですが…不勉強でスミマセン。

あと、ステューダーの近況をまるで効かなくなって久しいのですが。

投稿: ジャンボ | 2011年6月22日 (水) 13時39分

ジャンボさん、
そうですね、皆さん、ほとんど同世代のアメリカ人ソプラノのようですね。ステューダーの近況は確かに聞こえてきません。

投稿: YASU47 | 2011年6月23日 (木) 00時16分

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2週間近くも前に見たのに、今更ここで取り上げるのは、実は前のエントリーと関係が。 今回のMETライブビューイングで今回最も刺さったのが、3幕でのヴォータンと娘ブリュヒンデ(写真)のやり取り。 ヴォータンの決定的な自己矛盾をはらんだ指示を、娘ブリュヒンデが...... [続きを読む]

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