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2011年4月16日 (土)

「座る悪魔」 @MOSCOWトレチャコフ美術館

110416demon 再びモスクワに来ています。十数年ぶりに訪れたトレチャコフ美術館は外観も諸設備も展示室もひと回り広くかつ明るく、近代的な装いに変わっていました。かつてはこじんまりとしていて、いかにも個人収蔵館の雰囲気を漂わせていたような記憶があります。土曜日だけに内外から多くの人々が訪れていました。

トレチャコフといえば、丁度2年前に「忘れえぬロシア展」と題したトレチャコフ展が渋谷の東急Bunkamuraで開催され、いそいそと出かけたものでした。レーピンやクズネツォフといった所謂移動展派の明るい色調の写実画がとても好印象でした。今回はそのときの目玉作品、クラムスコイの「忘れえぬ人」やセロフの「桃と少女」などとは再び向き合うことが出来たものの、感銘を受けた移動展派の明るい作品群はどこかに貸出中のようで残念ながら再会を果たすことが出来ませんでした。それでも、シシュキン(1832-1898)やクイニジ(1842-1910)といった19世紀末の写実画家たちの描いた森や田園風景は観る者をとても穏やかな気持ちにさせてくれます。

今回驚いたのは、恐らく日本での知名度は相当に低いと思われるミハイル・ヴルーベリ1856-1910)の作品群が大部屋の一つを占有していたことです。その代表作ともいえる「Seated Demon」(邦題「座っている堕天使」)は約1x2メートルという想像以上の大きさでした。実は、個人的この作品を知ったのは革命前夜のロシアを舞台にした皆川博子氏の小説「冬の旅人」の隠れたモチーフとされている絵だったからです。小説の内容も凄まじいものでしたが、この絵自身も相当に激しい印象を観るものに与えます。夕暮れ時、座りながら佇む悪魔の目は夕陽に反射して鋭く光っています。いったい何を考えているのでしょうか?たくましい筋肉とまるでジーンズのような下半身のカジュアルさが現代的です。表情がどことなくマイケル・ジャクソン似です。まわりの花はゴツゴツとしていてまるで岩のようです。殺伐とした背景の中で悪魔の孤独を同時に感じ取ることが出来ます。叙事詩を題材にしているとのことですが、不思議な魅力を持った絵です。

モスクワも1-10度の間と短い春が訪れようとしています。5月に入ると公園や郊外はあっという間に新緑で覆われることになります。鮮やかな季節の転換がそこまで来ています。

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コメント

YASUさんこんばんは。
モスクワ、トレチャコフ美術館!
行かれたのですね。
実際のデーモンの絵をご覧になっただなんて、とても羨ましく読ませて頂いています。
マイケルジャクソン似というのが、面白いですね。
そして、とても大きな絵なのですね!

投稿: ワルツ | 2011年4月29日 (金) 23時40分

ワルツさん、
この絵の存在を知ったのはワルツさんのblogからでした。以来、果たせずに気になっていた宿題の一つが片付いた気分です。ギャラリーにはヴルーベリによるデーモンの連作が展示されていますが、やはりこの座っている姿が一番印象的でした。

投稿: YASU47 | 2011年4月30日 (土) 14時26分

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