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2010年10月 7日 (木)

R・シュトラウス 『アラベラ』 @新国立劇場

101007 新国立劇場の『アラベラ』を観てきました。全編を通した、めくるめくような音の洪水に浸り、それをたっぷりと堪能することが出来ました。同じ、R・シュトラウスでも、上演頻度やCDDVD作品の多さといった人気指数では『ばらの騎士』が一歩勝るでしょうが、音楽の美しさ、豊かさ、思い切りの良さという点ではこの『アラベラ』の方が上回るような気がします。それほどに、この作品の音楽は魅力に溢れているのです。

今回の新国立劇場における『アラベラ』も大満足でした。まず何よりもタイトルロールを演じたミヒャエラ・カウネ(S)の声質、声量、情感、さらに舞台上での立ち姿が素晴らしかったのです。初めて聞く名前でしたが期待を遥かに超える美しい歌唱を聴かせてくれました。とりわけ、第1幕のソプラノ二重唱、第2幕のバリトンとの二重唱、第3幕のグラスの水を運ぶシーンでの独唱などは、まるでこのまま時間が止まってくれたらと思わせるような至福のひと時でした。

マンドリカ役のヨハネス・マイヤー(Br)は豊かな低音の響きが魅力的でした。ズデンカ役のラスムッセン(S)は最初、声量の少なさが若干気になりましたが、美しい声を持っています。天羽明恵(S)を始めとする日本人歌手たちも健闘していて全く違和感はありません。新国立劇場のキャスティングの良さに改めて感じ行った次第です。

フィリップ・アルローによる演出は光の効果を多用した美しい舞台を創り上げています。ホテルの壁に掲げられたクリムトの絵画と森英恵の衣装が原作を数十年ずらした20世紀初頭の時代設定であることを示しています。むしろ作曲年代との一致が好ましく感じられます。窓の外に降り続ける雪が室内劇の効果を高めていました。

ウルフ・シルマー指揮によるオーケストラ(東フィル)は正味2時間半にわたって全く弛緩することなく豊かな音量を響かせながら、技巧的かつ職人芸的なR・シュトラウス音楽をたっぷりと聞かせてくれました。

ちなみに、20076月に同じ新国立劇場の『ばらの騎士』を観ています。この時も演出、キャストを含めた新国立のレベルの高さにとても感心しました(過去記事参照)。今回はそのことを踏まえた上で、いっそう音楽に集中して楽しめたように思います。生でR・シュトラウスのオペラを聴くことの何という贅沢さ!

手元には2枚の『アラベラ』映像盤があります。

G・ショルティ指揮/VPO/ヤノヴィッツ/ヴァイクル(映画版)

・ウェルザーメスト指揮/チューリッヒ歌劇場/フレミング/ラーセン(2007年ライブ)

演奏の完璧性ではスタジオ録音の前者に軍配が挙がりますが、面白さではやはり舞台映像の後者が勝ります。青色系の舞台が今回の新国立劇場と似ていますが新国立の方が遥かに豪華でかつ細部も凝っていました。チューリッヒ盤は今やシュトラウス・ヒロインの第一人者ともいえるルネ・フレミングの奔放で現代的なアラベラがとても魅力的です。

私にとって『アラベラ』は『ばらの騎士』や『サロメ』と共に、あるいはそれ以上にこれからも折に触れて聴き続けてゆく作品です。

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コメント

うーん こちらにも感動の波が波及します
もし また どこかでこのタイトルが上演される際はご案内くださいますか?  酔いしれてみたいです

投稿: lovebabo | 2010年10月14日 (木) 21時59分

lovebaboさん、
この作品は稀にしか上演されないでしょう。DVDなら3種類出ているのですが・・・。
手っ取り早くオペラに酔いしれる方法は11月から始まるMETライブビューイングかもしれませんね。今シーズンのスケジュールは以下のサイトにあります。
http://www.shochiku.co.jp/met/schedule/

投稿: YASU47 | 2010年10月14日 (木) 22時40分

!!!又来ましたね!  ヤスさんと出会って楽しいイベントが増えました
行けるだけ 見たいです

とりあえずは ラインの黄金ですね 

投稿: lovebabo | 2010年10月17日 (日) 23時28分

lovebaboさん、
僕はワグネリアンではないのですが、今シーズンはやはり「指輪」シリーズに挑戦です。

投稿: YASU47 | 2010年10月18日 (月) 09時03分

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