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2010年8月12日 (木)

『ブリューゲル版画展』 @東急Bunkamura

100812brugelten 渋谷の東急Bunkamuraミュージアムで開催中のブリューゲル版画展829日まで開催)に出掛けてきました。油彩画と並ぶブリューゲルのもう一つの世界です。

今回はベルギー王立図書館所蔵のブリューゲルと彼を取り巻く同時代の画家の版画作品計150点が展示されていますが、やはりブリューゲルの作品(半数を占める)は訴える力において群を抜いています。

ブリューゲルの版画というとまず怪物たちの登場する諺、寓話などをモチーフとした幻想的、怪奇的な作品が目に浮かびますが、今回はそれにもまして山岳や田園風景を描いた作品の雄大さと精緻さに目を奪われました。その描写(特に遠景)の精緻さについては現物に目を近づけることで改めて実感することが出来ます。遠くの教会の尖塔やねぐらに戻る鳥の群れなどが細かく描かれています。物語性のある作品では、主人公が例によって画面の隅で目立たぬように何らかの動作をしています。

宗教的な主題では「7つの罪源」というシリーズ作品がとりわけ面白く、人間を罪に導くとされる欲望や感情を大胆かつコミカルに描いています。次から次へと登場するパロディ化された人間たちと、周囲に群がる怪物たちがこれら止められない欲望の行く末を痛烈に皮肉っています。他の寓話作品と同様に、当時は啓蒙行為の一環であったかもしれませんが、結果としてこれらの作品は当時も今も変わらぬ人間の性(さが)を強烈な風刺するものとなりました。

一方で「7つの徳」というシリーズ作品もありますが、ここでも、「剛毅」は残酷な攻撃を、「正義」は審判と処刑を描くなど、結果として、人間行為の愚かさを強烈なアイロニーとなって表現しています。

他にも民衆の生活や諺、仕草などを描いた人間臭い作品、油彩作品の版画化されたもの、どういく訳か帆船を主題とした作品群などが展示されています。これまで、ブリューゲルといえば、もっぱら油彩作品に親しんできましたが、今回改めて版画作品の魅力と威力を知った次第です。帰宅してからも大判のブリューゲル絵画・版画集を眺めながらたっぷりと余韻に浸りました。ブリューゲルの作品というのは見るたびに新しい発見があり、飽きることがありませんね。

尚、ブリューゲルに関する過去記事は以下です。

ブリューゲル・『怠け者の天国』

野間宏・『暗い絵』とブリューゲル

 

100812brugel

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コメント

わお  ブリューゲルの版画はあまり見たことがなく
ヤスさんの文章にわくわくしています

ちょっと 見に行こうかな

投稿: lovebabo | 2010年8月22日 (日) 22時14分

lovebaboさん、
面白いです!間近で目を凝らして眺めていると次々と新しい発見があって飽きないのです。また、油彩画に比べると主題が更にストレートに伝わってきます。

投稿: YASU47 | 2010年8月23日 (月) 09時51分

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