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2010年3月 9日 (火)

トム・ロブ・スミス『チャイルド44 』

100308child44 何とも強烈で凄まじい内容のサスペンスミステリーでした。この作品は2008年度のCWA賞(英国推理作家協会賞)の受賞作ということで発売以来、日本でも評判になっていた作品です。作者のトム・ロブ・スミスは1979年生まれの32才、荒削りなところはあるものの、この作品がデビュー作というから驚きです。

この物語は実際にロシアで50人以上が犠牲になったという連続殺人事件(チカチーロ事件)を題材としています。この事件が起こったのは1978年から1990年の間で、犯人のチカチーロは1990年に逮捕、ソ連邦崩壊後の1992年に死刑判決を受けて処刑されています。小説では時代を40年ほど遡らせて、1954年、未だ、スターリンの粛清の嵐が止まないモスクワと中部の地方諸都市を舞台としています。そのことで、連続殺人事件を追う主人公と周辺の人々が関わるスターリン体制下での国家の病理や恐怖のシステムがこれでもかと描かれます。

ベストセラー作品であるにも関わらず、ロシアでは未だに発禁(今の時代にどれだけ意味があるかは不明ですが)となっているとのことです。すでに1956年の党大会におけるフルシチョフの秘密報告以降、スターリン体制は否定され、その粛清と恐怖政治の実態が様々の形で暴露されてきたにも拘わらず、改めてこのようなミステリー小説において、その時代の恐怖が克明かつ臨場感をもって描かれることはロシア政府にとっても決して好ましいことではないのでしょう。こうして、連続殺人事件を巡るミステリーもさることながら、恐怖政治による抑圧が一層のおぞましさをもって強調される作品となりました。

物語展開には粗さや若干の無理も見られますが(特に終盤での民衆の過剰な善意)、そのような瑕疵は問題にならないほど、作品そのものが持つ力とインパクトは強烈です。主人公とその妻の内面の描き方も丁寧な筆致で引き込まれます。この作品はすでに映画化が決定されており、続編の「グラーグ57」もすでに発売されています。どちらも見逃せません。

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コメント

こんにちは。
YASUさんの感想が私にとって解説となって、改めてこの本の世界に浸っています。
すさまじい内容に暗澹たる気持ちになりましたが、これが現実なのでしょうか。
中国の共産主義社会を描いたユン・チアンの『ワイルド・スワン』を読んだ時にも
あまり内容に打ちのめされたのですが・・

続編『グラーグ57』も先日読み終えました。
雪どけと言われたフルシチョフ時代も地獄は更に続いてましたね。(>_<)

投稿: ワルツ | 2010年3月13日 (土) 12時02分

ワルツさん、
現実を描いていると思います。但し、中国や東欧への伝播も含めてスターリン主義という不幸な体制がロシア革命の意義と理想社会へ向けた可能性を無残に打ち砕いたものとも言えるでしょう。権力に固執したスターリンが最初に粛清の対象としたのは、少なくとも革命の意義と成果を守ろうとした政敵たちでした。彼らが一掃されてた後、普通の人々にとっての地獄も始まりました。

遅ればせながらTBさせて頂きました。また、「グラーグ57」は下巻に入りました。

投稿: YASU47 | 2010年3月14日 (日) 17時51分

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