『命の水を求めて』・ペシャワール会の活動
アフガニスタンの東部、戦乱と大干ばつという困難な環境の中で、2003年から2009年にかけてペシャワール会(中村哲代表)による井戸掘りと用水事業を描いたビデオの上映会がありました(八千代市の市民団体主催)。これはNHKで放映された現地ドキュメンタリー番組を60分間に編集し直したものです
ペシャワール会の活動については最早詳しい説明は不要でしょう。1984に医療活動を開始した中村医師を中心に、井戸掘り(計1500本)による飲料水の確保と灌漑工事による農業用水の確保という事業を実施し、戦争と干ばつによって疲弊した村と農地の復興、更にはそのことによってアフガンでの恒久的な平和を目指しているNGOです。これらの事業は日本の市民たちによる善意の寄付でまかなわれました。2008年8月にメンバーの一人、伊藤和也さんのテロ組織による誘拐・殺害という悲劇に見舞われ、殆どの日本人スタッフは国外に退去せざるをえませんでしたが、2009年にはついに全長24キロの用水路が完成しました。ビデオの中で、一期工事が完成し、クナール川からの水が用水路に導かれるシーンは感動的です。
1979年にソ連軍がアフガンに侵攻してから30年が経ちました。以来、この国は超大国や周辺諸国、そして様々の政治勢力の思惑に翻弄され続けてきました。私たちが新聞やTVのニュースを通じてこの国を眺めると、米国、旧ソ連、パキスタン、タリバン、北部同盟、アルカイダ、更には国連、ISAFといった諸勢力の地政学的なせめぎ合い図として捉えがちです。しかし、そこには約3000万人の人々が貧困の中に住み、生命の危険に晒され、更に約600万人が難民化しているという現実があります。ペシャワール会は国や政治党派からは一線を画し、一貫して弱者と疲弊した農村地域の視点から復興活動を実践しています。
鳩山民主党政権は昨年11月に、アフガニスタンに対して、5年間で総額50億ドルの援助額を決定しています(給油活動に代わるものとして)。「元タリバン兵士の社会復帰のための職業訓練」「警察官給与負担」「農業・医療支援」だそうですが、具体策はいっこうに見えてきません。相変わらずの小切手外交というだけでなく、アフガン国民自身による自助努力を無視した悪しき一方通行援助になりかねません(最悪、日本製高級医療器具やハコモノ建設の押し付け?)。真の平和とは?復興とは?支援とは?いろいろと考えさせる上映会でした。
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コメント
家族の1人が国際援助の道を選び、以前アフガニスタンからもオファーがあったので人ごとではありません。自立を援助するためには、教育や、労働で収入を得る道を探るのが大切と聞きました。日本の援助金がアフガニスタン政権幹部や政商に搾取されないことを願っています。
投稿: rei@北の街 | 2010年2月 1日 (月) 09時50分
yasuさま こんにちは
お久しぶりです
ブログは拝見しております。
ペシャワール会の活動
非常に貴重なものだと思っております
タリバンが悪いのか、現政権が悪いのか、分かりませんが、ただ一つ分かっているのは、某大国の迷惑千万な軍事介入が問題だということです。
これがなくならない限り、現政権に援助したところで、まったくの無駄だと、私は思っております。
そういう意味でも、オバマの「ノーベル賞受賞演説」、呆れてものも言えませんでした、爆〜。彼は変心したのでしょうか?軍需産業に負けているのでしょうか?
所詮、大国の大統領というだけなのでしょうか?
あんな援助をするくらいなら、真っ当なNGOを支援した方がマシだと思うのは、私くらいのものなのでしょうか?情けなくなりますね〜;;
ミ(`w´彡)
投稿: rudolf2006 | 2010年2月 1日 (月) 10時49分
reiさん、
そうですよね。援助金がその国の利権構造と腐敗をかえって促進させてしまう愚だけは避けて欲しいと思います。そのためには、その地に足をつけているNGOとの対話は欠かせないと思います。
投稿: YASU47 | 2010年2月 1日 (月) 21時22分
rudolfさん、
twitterでも活躍されてますねっ。listに入れさせていただいてます。
rudolfさんのご意見には全面的に賛同します。超大国の身勝手な横暴と押しつけが今のアフガン、イラク等々での悲惨を生んだことは間違いありません。オバマの非核への取り組みも掛け声倒れになるのでしょうか?ノーベル賞受賞の一方でアフガンへの増派は許せませんよね。
投稿: YASU47 | 2010年2月 1日 (月) 21時32分