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2010年1月28日 (木)

『ホフマン物語』@METライブビューイング

100127 4週連続というMETライブビューイング月間の2週目、オッフェンバックの『ホフマン物語』はちょっと厄介な作品です。E.T.ホフマンの原作を読んだことはないのですが、物語の主人公ホフマンの内面への共感を感じ取ろうとすると、それなりに難解で底が深いことに躊躇してしまうのです。今回の演出者のバートレット・シャーはインタビューの中で作家の意図よりもオッフェンバックの音楽世界を表現することを優先したというようなことを語っていました。ということで、単純に演出の斬新さ、舞台の美しさ、そしてゴージャスな音楽を楽しみましょう。

上述したように深入りしようとすれば難解な作品ですが、シャーの演出は視覚上、とても分かり易く説得性のあるものでした。3幕に分かれて主人公の恋の遍歴が綴られていくのですが(プロローグとエピローグを含めれば全5幕)、各場面は鮮やかな色彩と洒落た小道具、衣装によってそれぞれ性格づけられています。シャーはミュージカル「南太平洋」で2008年のトニー賞(最優秀演出賞)を受賞したというブロードウェイ出身の演出家だそうです。なるほど・・・。

出演者はアントニア役の・ネトレプコを除いて初めて名前を聞く歌手ばかりでしたが違和感はほとんどありませんでした。すでに初々しさこそ感じられませんが、ネトレプコの存在感は群を抜いています。暗く重めの声がアントニアの不幸を更に際立たせていました。

ただ、オランピアのキャスリーン・キムは歌唱に工夫が感じられず、ビジュアル上もかなり浮いていたように感じました。抜群のコロラトゥーラを聴かせると同時に表現力が群を抜いているN・デセイや壊れ具合が芸人の域に達しているP・プティボン(French Touch映像)のオランピアが刷り込まれていると、期待していただけに、キムの平板さにはいっそうの不満が残ります。

今回の演出で美味しい役だったのがケイト・リンジー(MS)の演じるニクラウスでしょう。舞台に出ずっぱりで、ある時はホフマンの忠告者、ある時は挑発者として単なるズボン役を越えた演技力と魅力を発揮していました。歌唱でも第3幕で歌われるロマンス「震える弓の下で」と第4幕のジュリエッタとの二重唱「美しい夜が(ホフマンの舟歌)」は圧巻でした。

手元にある映像はリヨン国立歌劇場の舞台です(1993年、ルイ・ルエロ演出、ケント・ナガノ指揮)。ホセ・ファン・ダム、バーバラ・ヘンドリックスに加えてデビュー後3年しか経っていないデセイのオランピアを聴くことが出来ます。しかし、舞台装置は安っぽく、演出も平板で、「ホフマン物語」がこれまで苦手であったのは、この映像作品によるものだったのかもしれません。今回のMETの舞台は改めてこの作品の面白さと実は壮大なグランドオペラであったことを教えてくれました。

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