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2009年12月23日 (水)

浅田次郎・『ハッピー・リタイアメント』

91223_2 「最高の人生とはたいそうな給料をもらい、テキトーに仕事をすることである。」という帯コピーに惹かれて購入して一気読み。「上も下もつかえているから横に出してもらった」冴えない主人公たちの「お茶を飲んだり本を読んだりしてればいい」夢のような天下り先での物語です。話が出来過ぎているという展開上の難点はありますが、天下りを揶揄したブラックな表現の連続には大いに笑えます。

プロローグによれば、この物語は浅田次郎氏がかつて実際に利用したことのある(かつ踏み倒さざるを得なかった)融資債務保証機関からの訪問を受けたことがヒントになっているようです。物語では、独立行政法人であるこの債務保証機関の不良債権回収部門が恰好の天下り先になっているという訳です。すでに時効となった債権の回収努力をするのではなく、その記録を保管することだけが天下り職員たちの「仕事」です。債権放棄と彼らの給料という税金の二重取りですよね。この舞台設定の面白さにまず笑わされます(でも、これって本当に実態なの?)。

この夏の政権交代以降、利権と結び付いた天下り構造の理不尽さがますます明らかになるにつれ、僕らの怒りは増している訳ですが、浅田次郎氏はその天下りの実態を面白おかしくデフォルメしながらも痛快に笑い飛ばします。時宜に見合った一冊といえるでしょう。

勿論、天下り役員や職員の全てがこのような環境を享受している訳ではなく、実際に独立行政法人や財団法人、社団法人等(いろいろあるなぁ)の現業で働く一般職員の勤務条件は決して恵まれているものではありませんし、ましてや民間における子会社再雇用の条件は極めて厳しいものでしょう。昨日、年末ジャンボ宝くじの売り場で長い列を作っている人々に、天下り組織の「くびき」からの脱出を願って冒険を開始したこの本の主人公たちの姿が重なって見えてしまったのは、やはり今の世相ゆえなのでしょうか。

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コメント

こんにちは。浅田次郎さんの作品は数冊しか読んだことがないのですが、好きな作家の一人です。こちらもおもしろそうなので読んでみようと思います。
リタイアメント・・・もうすぐなんです。天下り先、、、もともと天にいたわけじゃないし。どうしましょう(苦笑

投稿: carry | 2009年12月23日 (水) 15時21分

carryさん、
ユーモアとジョークが満載で大いに笑えますが、時々ブラックが効きすぎたり、自分に当てはまったりでギョットする場面も多いのです。覚悟してお読み下さい。

「天」とは無縁の僕らにとっては、リタイア後こそ「草」育ちの強さを見せましょう。

投稿: YASU47 | 2009年12月23日 (水) 16時19分

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