『アイーダ』@METライブビューイング
お馴染みのMETライブビューイングは3シーズン目に入っています。今回出かけたのがヴェルディの大作『アイーダ』でした(12/2東劇)。案内役はすっかり板に付いたルネ・フレミング、真っ赤なスーツが良く似合います。ますますスリムに若返っていく不思議な存在です。スターぶらないところにとても好感が持てます。
第2幕のバレー振付けを除いて、演出も舞台も衣裳も1989年のメト版DVDと同一です。もう20年以上にわたって継続されている伝統的な、如何にもMETらしい豪華絢爛な舞台です。その20年前の舞台映像で同じアムネリスを歌っていたのが若きドローラ・ザジック(MS)でした。気が強く、嫉妬心に燃える憎まれ役ですが、一方で悩める王女を見事に好演し、主役のアイーダ(A・ミッロ)をすっかり霞ませていました。20年後のザジックは流石に体型も身のこなしもすっかり変わりましたが声の迫力は一層磨きがかかったようです。インタビューで彼女はすでに20年、250回にわたってアムネリスを歌ってきたとのことです。
タイトルロールのアイーダにはリトアニア出身のドラマティック・ソプラノ、ヴィオレタ・ウルマーナが配されました。重量級の二人が並ぶと視覚的にもかなりの迫力ですが、最後の地下牢のシーンでは静寂の中でウルマーナのリリックな高音の美しさが胸を打ちます。この作品はこけおどし的とも言える第2幕のスペクタクルシーンを終え、何といっても3幕のアムネリスの独白シーンと4幕のラストの美しさが秀逸です。最近は演技力に長けたビジュアル系ソプラノにすっかり慣れてきってしまいましたが、今回は改めて音楽の雄弁さを際立たせる伝統的オペラの醍醐味を楽しむことが出来ました。
ところで、今回は幕間のインタビューがとても面白かったです。登場したのは何と兵士、侍女、捕虜を演じた無名のエキストラたち。内二人はフォーチューン誌の記者と医療関係者だそうです。オペラファンが高じてエキストラのオーディションを受け、そのまま病みつきになってしまったようです。劇場はこうした人々にも支えられているのですね。最後の、
ルネ「その捕虜の格好、とても良く似合うわね」
エキストラ「では、今度ばらの騎士にもこれで出ましょうか?」
ルネ「遠慮しとくわ」
という軽妙なやりとりには笑えました。
尚、昨シーズンはスピーカーからの大音響と音割れで耳を塞ぎたくなったこともしばしばでしたが、今回は抑制された音量で大幅に改善されていました。東劇側で何らかの配慮を行ったのでしょうか?
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