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2009年11月12日 (木)

加治将一著・『竜馬の黒幕』

91028 来る、1115日は1867年のその日に京都河原町の近江屋で中岡慎太郎と共に暗殺された坂本竜馬の142年目の命日です。竜馬暗殺の下手人とその黒幕については多くの説があり、今でも歴史ミステリーの一つとして多くの人たちによって採り上げられています。

一応、通説となっているのは会津藩の傘下で新撰組と共に京都の治安維持にあたっていた幕府見廻組による襲撃です。明治政府による取り調べで、見廻組員の一人、今井信郎が襲撃を自供していることからも最も有力な犯人説となっています。司馬遼太郎の「竜馬がいく」での暗殺場面の描写もこの自供がベースとなっているようです。

他にも現場に残された刀の鞘と下駄という物証を根拠とした新撰組説、「いろは丸事件」で竜馬に恨みを持つ紀州藩説(事件後、海援隊の陸奥陽之助たちが復讐を目的として紀州藩士たちを襲撃している)などがあります。更に黒幕にいたっては、幕府側のみならず、土佐藩説(大政奉還の功績を守ろうとした後藤象二郎)、武力倒幕派説(特に薩摩藩にとっては内戦回避路線の竜馬は邪魔となっていた)といった説が根強く残ります

この加治将一著『竜馬の黒幕』(祥伝社文庫)は副題が「明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン」となっているように、長崎の武器商人、グラバーとアーネスト・サトウ、パークス公使といった英国人たちの動きを追いながら、竜馬、伊藤博文(長州藩より英国へ密航留学)、五代友厚と寺島宗則(共に薩摩藩より英国へ密航留学)たちの英国との関係を解明しています。竜馬がまとめたといわれる「船中八策」にしてもその原型はサトウによる「英国策論」であり、また、英国や武器商人グラバーの後ろ盾なしに脱藩浪人の一人でしかない竜馬が薩長同盟をまとめきることは出来なかったであろうと述べています。こうして著者は明快な「竜馬=英国エージェント」説に立ち、やがて、竜馬は何故消される運命になったのかという推論へと導かれます。

著者の真犯人説は推論が多く、決して一概に賛同できるものではありませんが、歴史ミステリーの一面に光を当てているという面ではとても興味を惹かれました。秋の夜長、竜馬の命日を前にして142年前の殺人事件を巡るミステリーにクビを突っ込んでみては如何ですか?

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