「ロシア・ナショナル管弦楽団」@東京文化会館
久々のオーケストラコンサートは川久保賜紀をソリストに迎えてのミハイル・プレトニョフ指揮、ロシア・ナショナル管弦楽団来日公演でした(7月8日、東京文化会館)。
プレトニョフといえば最初はピアニストとして脚光を浴びたものの、ソ連崩壊前夜の1990年に民営のロシア・ナショナル管弦楽団(RNO)を創設し、その後はピアニストとしても指揮者としても活躍を続けています。RNOもすでに創立20年を迎えようとしていますがロシアを代表するオーケストラの一つとしてすっかり定着したようです。
最初の曲はリムスキー・コルサコフの組曲「雪娘」です。初めて聴く曲でしたが、ウォーミングアップよろしくフルオーケストラサウンドを心地よく鳴らしていました。第二ヴァイオリンを右側に配してバランスをとると共に中央部から、いかにもロシアのオーケストラらしい豊かな低音域を響かせていました。
次のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲では川久保賜紀の豊かでスケールの大きな演奏に圧倒されました。オケとの息もぴったりです。第一楽章でカデンツァが消え入るように終わり、オーケストラがそれを優しく引き継ぐ箇所の絶妙さ、全編にわたるフルオーケストラとの掛け合いの妙など、さすが2002年チャイコフスキー・コンクール最高位(1位なしの2位)とロシア有数のオーケストラとの組み合わせです。ある意味、超ベタとも言える組み合わせですが、チャイコフスキー情緒にたっぷりと浸るには申し分がありません。
最後はベートーヴェンの交響曲第三番「英雄」です。プレトニョフの「英雄」は、各所でタメを作ったりテンポを揺らしながらもオケを完全に掌握しきった演奏を聴かせてくれました。鋭さやスマートさというものは感じられませんでしたが、低音域を響かせながらオケと一体になった、まるで重戦車のように迫力あるロシア風のベートーヴェンでした。と同時に、チャイコフスキーの協奏曲がその時々の独奏者との独特の緊張を生みだすのに対して、ベートーヴェンの交響曲の場合は20年にも及ぼうとする指揮者とオーケストラのすでに出来あがった演奏スタイルというものを強く感じました。
今夜のコンサート、梅雨の蒸し暑さを吹き飛ばすには最適の選曲と演奏でした。
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コメント
あざらしさん、文化会館で聴かれたんですね。
私はこの日は直前まで迷っていたのですが、仕事がたて込んでいて、体力が持たなそうなので止めました。
あざらしさんの感想で想像できて嬉しかったです。
9日のサントリーホールのベートーヴェン(7番、5番)は素晴らしかったです。確かにロシアらしいベートーヴェンなのかも。
最近、交響曲全集のCDも出しているので、音楽がよく分析されていて、オーケストラも指揮に応えて見事でした。
投稿: LENI | 2009年7月12日 (日) 18時18分
LENIさん、
文化会館でお会い出来なかったのは残念です。
プレトニョフとRNOの演奏はオーケストラの底力を感じさせてくれる演奏でした。僕にとっては、やはりロシアの情感と独奏者との緊張関係がスリリングなチャイコフスキーの方により感銘を受けました。
投稿: YASU47 | 2009年7月12日 (日) 22時00分