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2009年5月 1日 (金)

大竹収・『木工ひとつばなし』

90501 信州安曇野に工房を持つ木工家、大竹収氏によるエッセイ集が出版されました(プレアデス出版)。著者のHPに書き貯められてきた文章が出版社の眼にとまり、必要に応じた書き直しと再編集を経て出版に至ったものです。全体を通して著者の「木」への愛情と手造り製作へのこだわり、そして温か味あるインテリジェンスに満ちています。

「木」への愛情については、そもそも「樹」として持っていた生命へ敬意と共に、木目、節といった各々の樹や木材の持つ個性について語られ、都会人にとって忘れがちな樹という身近な存在への念を思い出させてくれます。更に樹木(植物)こそが二酸化炭素の固定化(有機物化)を通じて太陽光線のエネルギーを地球上に取り込むことの出来る唯一の存在であり、例えば化石燃料の消費というのは何億年もの時間をかけて貯めてきた貯金を一挙に使い果たしてしまうようなものだと警告しています。また生態系のしくみの中で森林や樹木が果たす役割について自然への畏敬の念と共に語られています。

木工家具製作については木材の選び方から始まり、加工上の様々の工夫や技術、苦労、満足等について語られます。とても平易な語り口ですので専門家ではなくとも大いに共感をもって読むことが出来ます。著者が設計(デザイン)ということについて一家言を持つのは木工家としては当然のこととしても、加えてプラント設計者としての経歴によるところも大きいのでしょう。

私にとって、著者はかつて海外プラントエンジニアリング会社での同僚でした。彼は回転機設計部に属し、最新の機械工学エンジニアとして世界中を飛び回っていたのです。工学的機能に設計美を見出してしまう性(サガ)のようなものがその根底にあるようです。

この本の随所に現れるインテリジェンスについても、その経歴と無関係ではないでしょう。早期退職によって職人の世界に飛び込んだとはいえ、自然科学知識のみならず、海外とそこに住む人々を知っていることは旧来的な木工職人の伝統世界とは一味異なる新世代職人を生みだしているように思えます。

『木工ひとつばなし』は金属やプラスティック製品に囲まれた生活の中ですっかり忘れかけていた樹木や木材の魅力を思い出させてくれました。今回、改めて身の回りの木製家具類を見渡してみて、それが例え量産品であっても木目の温もりや木の手触りの感触に懐かしさを感じとることが出来ました。木工に興味を持つ人だけではなく、自然や人間に温もりを求める人、土曜のTV番組「人生の楽園」に共感する人(^^;)にはお薦めです。

(下の写真はHPより)

90501_2

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コメント

木のいす やわらかいですねえ!
画像だけでも 著者の愛情が
伝わります

yasuさんは 面白い仕事時間と 人のつながりを
築いているのですね

投稿: lovebabo | 2009年5月 8日 (金) 23時18分

lovebaboさん、
「木」のみが出すことの出来る柔らかさなのでしょうね。
お陰様でlovebaboさんを含めて周りの一芸に秀でた方々や感性に優れた方々からとても良い刺激をもらえています。

投稿: YASU47 | 2009年5月 9日 (土) 20時56分

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