『ラ・チェネレントラ』@METライブビューイング
今シーズンのMETライブビューイング、最後の上映作品はロッシーニの『ラ・チェネレントラ』です。物語はいわゆる「シンデレラ」で実に他愛のないものですが、クレッシェンドを思いっきり利かせたロッシーニの活き活きとした音楽が魅力の作品です。
舞台装置は豪華さを売り物にするMETとしてはかなり安手な印象です。ごくオーソドックスな演出と相俟って安心は出来ますが新鮮味には欠ける舞台でした。指揮はマウリツォ・ベニーニ、名前からするとイタリア人でしょうか?しかし、ロッシーニ音楽の生命線ともいうべき洒落気と軽妙さがあまり感じられませんでした。例によって劇場の音響のせいでしょうか?音が鳴り過ぎです。
結局はエリーナ・ガランチャの美貌と歌唱力、才気といった魅力に全面的に依存した舞台となりました。人気絶頂の彼女がオペラ大衆化の宣伝に果たしている役割はとても大きなものがあると思います。今回のライブビューイングがガランチャ目当てであったのは私だけではないでしょう。
(ちなみにガランチャに関する過去記事は「ウェルテル」と「コジ・ファン・トゥッテ」の映像について)
他の主演者でいえば、アレッサンドロ・コルベッリ(ドン・マニフィコ)、シモーネ・アルベルギーニ(ダンディーニ)の二人の名ブッファ・バリトンはしっかりと脇を固めていましたし、二人のやはりブッファ・ソプラノ&メゾ姉妹も楽しめました。王子役に黒人テノール(ローレンス・ブラウンリー)を充てたのには流石にアメリカという感を強くしました。ただ、ガランチャとの身長差も含めて外観に違和感があったのも事実です。
手元には『チェネレントラ』の映像が2種類あります。
ひとつはヒューストン歌劇場(1995)でC・バルトリの魅力が全開です。コルベッリがここではダンディーニを演じています。演出、演奏、歌唱共に素晴らしい舞台です。
もう一つはグラインドボーン音楽祭(2005)で、L・ドノーセ(MS)、M・ミロノフ(T)のフレッシュなコンピが爽やかです。アルベルギーニがここでもダンディーニを演じています。
来シーズン(2009年10月-2010年5月)のライブビューイングのラインアップが発表になっています。ここに挙げておきましょう。カッコ内は主な出演者です。
トスカ(マッティラ、アルバレス)、アイーダ、トゥーランドット(グレギーナ)、ホフマン物語(ネトレプコ、ガランチャ)、ばらの騎士(フレミング、グラハム、シェーファー)、カルメン(ゲオルギュー、フリットーリ)、シモン・ポッカネグラ(ドミンゴ)、ハムレット(デセイ)、アルミーダ(フレミング)の9作品。
オジ・ファン・トゥッテ管理人として外せないのはやはり「ばらの騎士」「ホフマン物語」「ハムレット」でしょうか?でも、やっぱり生の舞台が観たい!
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