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2009年4月28日 (火)

アルジェリア – 今を旅する、昔を旅する

先日(4/25)、表題の講演会が上智大学で開催されたので聞きに行ってきました。主催は上智大学アジア文化研究所から4/30に出される「アルジェリアを知るための62章」(明石書店)の出版記念を兼ねたものです。大学の教室での講義形式など実に久しぶりなので新鮮な気分になりました。

内容は、アルジェリアの歴史、文化の専門家とアルジェリアでの生活体験者による講義とパネルディスカッションです。具体的には以下の題目で各講師とパネラーによるプレゼンテーションがありました。

「古代史の謎を解き明かす―クレオパトラの娘セレーネの墓」

「ナショナリストの肖像―民族運動を創った3人」

「中世史の不在―歴史教育の問題を考える」

「映画と絵画を旅する―アルジェリアの光と影」

「アルジェリアと日本―汗、涙、笑顔の交流の架け橋」

とてもバラエティに富み、かつ分かり易い内容でした。特に、この国ではローマ帝国支配以降の中世の歴史が欠如していることにより、民族のアイデンティティ形成をほとんど解放運動にのみ求めていることが政治的不安定の一因ではないかという指摘は興味深いものでした。その解放の歴史に関しては、フランスとの交戦状態前夜の民族運動に焦点が当てられており、やはり興味を惹かれました。様々な潮流が存在し、やがてFLN(民族開放戦線)へと統一されていきます。2か月前に観たばかりの映画「命の戦場」でのアルジェリア人たちの葛藤を描いた諸シーンが甦ります。

1970年以降、プラント建設等でアルジェリアに長期滞在された皆さんによる企業活動と現地交流、生活の紹介もありました。私自身も1978-9にかけてその一人として地中海に面したスキクダの町(下の写真)に滞在していたので懐かしさと共に大いに共感を覚えました。

その後、アルジェリアは長く暗いテロの時代を経て、今ようやく、資源開発や観光面で再び脚光を浴びようとしています。国内テロの消滅と一層の開放、日本との友好を願いつつ、単なるノスタルジーに終わらないこの国への関心と興味を継続していきたいと思っています。

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2009年4月19日 (日)

「スーザン・ボイル」@YouTubeと「エレイン・ペイジ」

すでに新聞(4/18日経夕刊)やネット上で話題になっているのでご存知の方も多いでしょうが、未聴の方はまず以下のYouTube映像を見てもらいましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=vMVHlPeqTEg

90419susan_2 これはイギリスの「Britains Got Talent」という素人オーディション番組に登場したスコットランド在住のスーザン・ボイルさんという「フツーの」オバさんです。47歳という年令に加え、外見とのギャップにより事前に審査員の揶揄と観客の冷笑を受けるのですがほんのワンフレーズの歌い出しだけで称賛へと一変してしまうのです。この数分間のドキュメントがYouTube上に掲載されてからのヒット回数は1週間で4300万回を超えていると言われています。彼女はすでにCNNにも登場し、CDデビューも予定されているとのことです。閉塞した社会におけるからこそのシンデレラのような奇跡がYouTubeというネット上の巨大な装置によってあっという間に世界中を駆け巡りました。

最初に審査員から「将来目標とする歌手は?」と訊かれたスーザンはすかさず「エレイン・ペイジ」と答えます(観客席からは失笑がもれます)。エレイン・ペイジといえば1980年代のロンドンウエストエンドにおいてサラ・ブライトマンと双壁をなすミュージカルスターでした。サラの特徴が声域の広さと声の美しさならば、エレインは歌の巧さの情感の表現で群を抜いていました。手元には以下の盤があります(自分も相当なエレイン・ファンだぞ(^^;)

<映像>

・「Cats」、1998年に舞台を映像化したもの。エレインは娼婦猫のグリザベラを演じ、名曲「Memory」を熱唱。

・「Andrew Lloyed Webber Celebrations」、エレイン、サラ、マイケル・ボールといったウェストエンドスターたちがロイヤル・アルバート・ホールに集合したコンサート

<CD>

・「Encole」、「夢破れて」を含むミュージカルナンバーを集めた名盤(下の写真)

・「Cats」、ロンドンオリジナルキャスト盤。エレインのグリザベラとオーディションに合格したばかりのサラのジェミマを聴くことが出来る。

・「The Collections」 

・「From a Distance

・「Romance and the Stage

・「Cinema

これらのCDはいずれもミュージカルや映画音楽からの抜粋が中心です。多くをロンドンのウェストエンド地区にある「Dress Circle」という知る人ぞ知る小さなショービズ専門店で購入しました(Websiteはここ)。ウェストエンドミュージカル観劇のついでに是非お立ち寄り下さい。

スーザンがオーディションで歌ったのは「レ・ミゼラブル」から「夢破れて(I Dreamed a Dream)」でした。もう20年近くも前のこと、PC通信のniftyserve内の「fmusical」というフォーラムでミュージカル曲の人気投票なるものがあり、1位が「命をあげよう(ミス・サイゴン)」、2位がこの「夢破れて(レミズ)」、3位は「オンマイオウン(レミズ)」であったと記憶しています。いずれも心に沁み入るようなウェストエンドミュージカルの名曲で、クロード・シェーンベルグ作曲による作品です。日本のミュージカルファンたちによっても支持されているこれらの曲は更にロイド・ウェバー作品も加えてイギリス人たちにとっては国民的誇りの対象でもあるのでしょう。スーザンが拍手喝采を浴びた理由のひとつには選曲もあったと思われます。

今回の出来事はひと時の話題に終わる可能性は大ですが、素晴らしい歌唱と感動的な瞬間を味わせてくれただけでも感謝です。

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2009年4月13日 (月)

『夢遊病の娘』@METライブビューイング

90413met いやぁ、さほど期待していなかっただけに満足度は一段と大きなものでした。もともと破綻しているストーリーゆえに自由な立場から小気味良く現代風に作り直すことで視覚的な面白さも増しました。「読み換え」演出といっても教訓めいた立場からではなく、あくまでもエンターテイメントの視点からのそれに徹底されています。

舞台を中世チロルから現代ニューヨークに移し、物語が劇中劇(リハーサル)という設定で進んでいきます。それ故、中世の物語が現代装束で歌われても違和感がないという訳です。しかし、次第に劇中劇とオリジナルの「夢遊病」の物語が交錯し、一幕の後半からは現実へとすり替わるのです。オリジナル作品に触れたことがないと理解に苦しむ場面もありそうです。でも、そんな時は洒落れた舞台美術を楽しみながらベルカント音楽に酔えば良いだけです。

そんな演出の小気味良さをいっそう引き立てるのがナタリー・デセイです。このようなベルカント作品ではデヴィーア等、イタリア系歌手に比べると歌唱では物足りなさを感じることもあります。またライブビューイングのアップ映像にも辛い年令にもなってきましたが、それを補って余りある演技力、身のこなし、そして表現力によって観る人を惹きつけます。通常では出演者たちにあまり動きを要請しない作品ですが、今回はデセイあってこその演出でしょう。

相方は昨シーズンのMET「連帯の娘」で共演したばかりのファン・ディエゴ・フローレスです。トニオ、マントーヴァ侯爵、今回のエルヴィーノと、どの役を演じても自己陶酔型のフローレス節になってしまいますが憎めません。周りの空気にお構いなく朗々と明るいハイテノールを響かせていました。ただ、難を言えば録音側でフローレスの場合だけは音圧レベルを下げてもらいたかったものです。新設備の「柏の葉」は「東劇」の音響よりはマシでしたがそれでも音割れ寸前でした。

90413sonnambula1_2 演出の面白さは上述した以外にもあちこちにあります。例えば、ニューヨークを舞台としただけあって、美術や小道具、衣裳はミュージカル風です。一幕の終わりで団員たちが舞台稽古用の台本や楽譜を引きちぎり、ここで劇中劇から本来の劇に移行したことが示されます。よく考えられた演出です。この劇中劇の破綻はプロンターの引っ張り出しによっても表現されています。オリジナルでは悪役となってしまい後味の悪さを残すリーザ役を活動的で魅力ある存在として引き立てています。勿論、ジェニファー・ブラックという若いソプラノの好演あってこそです。母親役も通常よりは前面に出てきて母子愛をうたいあげます。いつの間にかニューヨークには雪が降り始めました。アミーナはそんな屋外の高所を眠りながら彷徨います。スリルも現代的です。フィナーレではチロルの民族衣装での大円団となり、鮮やかで明るく、理屈抜きのハッピーエンドで会場を沸かせます。などなど・・・とても楽しめました。

指揮はイタリアの中堅、エヴェリーノ・ピドです。オーケストラが出しゃばることなく、ベッリーニの美しい音楽を職人芸的に聴かせてくれました。

尚、手元には2004年フィレンツェ歌劇場のライブDVDがあります。出演者はエヴァ・メイ(アミーナ)、J・ブロス(エルヴィーノ)他です。典型的なベルカント演出で歌唱は実に美しいのですが面白見には欠けます。もうひとつ、2004年に発売されたA・ネトレプコのTHE WOMAN – THE VOICEというビデオクリップ集の中にこの作品からの一曲が含まれていますが、ここでのアミーナはまさに売出し中のネトレプコの魅力が全開です(逆に言えばこの時がピーク?)。

今シーズンのライブビューイングも一作品だけを残すだけになりました。E・ガランチャの「チェネレントラ」・・・見逃せませんね。

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2009年4月 7日 (火)

新番組・『飛び出せ!科学くん』

Photo 2か月ほど前に紹介したばかりのニッポン放送の深夜番組「中川翔子のギザサイエンス」が唐突に終了してしまいました。折角のユニーク、かつ楽しい深夜番組だったのに残念です。

代わって登場したのがTBS、月曜2330分からの新番組「飛び出せ!科学くん」です。こちらはTV番組であり、番組コンセプトも全く異なりますが、嬉しいことに「科学」と「しょこたん」が共通のキーワードです。

新番組はパーソナリティのココリコ田中直樹と「しょこたん」こと中川翔子が「地球は最高の遊び場だ!」を合言葉にスタジオから外に飛び出そうというものです。46日(月)の第一回放送はココリコ田中の趣味の一つをテーマにした「深海ザメ捕獲プロジェクト」なるもので、駿河湾で田中自らが漁船に乗り込み、深海ザメを追うというものでした。番組そのものはよくあるドキュメントバラエティに傾きがちで、「理系要素」には欠けるところがありましたが、科学的分野への好奇心にかけては一癖も二癖もある二人の軽妙な会話とコメントによってこの番組の特異性を垣間見ることが出来ました。

「ギザサイエンス」では若い「本物の」研究者たちの生の声が面白かったのですが、「飛び出せ!」ではリアルな映像による説得力が武器となります。NHKの「サイエンスゼロ」のようにじっくりと正攻法で組み立てられた番組構成とは異なり、パーソナリティ二人の個性に頼ったいわばゲリラ的番組です。番組の成功はこれから如何に視聴者の科学への好奇心をくすぐるテーマを選び、かつそれを知的に表現出来るかによるでしょう。番組の題名に恥じないように、初回では物足りなかった「科学的視点」を今後はぜひ取り入れてもらいたいものです。しばらくは注目を続けることにしましょう。

 

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