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2009年3月24日 (火)

小池真理子『望みは何と訊かれたら』

90324_2 再び「あの時代」を背景とした小池真理子の作品です(200710月、新潮社)。僕にとっては「無伴奏」「水の翼」と同様、1968-9年頃の仙台の「あの空間」への共感が読み始めの切っ掛けでしたが、物語はそんな小さな感傷を超えて、「あの時代」そのものの空気を映し出しています。

ネタバレにならない程度の粗筋は以下です。仙台や東京での「健全」な運動を通じてその時代に参加していた主人公が、ふとした切っ掛けで非合法活動へと関わっていきます。やがてそこから脱走した彼女を待っていたものは退廃と甘美に満ちた罠、そして、二度目の脱出・・・。物語は30数年前の「あの時代」と2006年の今とを繋ぎます。

背景となっている出来事に連合赤軍事件と連続企業爆破事件があります。追い詰められた党派の一部の暴走というよりは、もともと社会性の欠如している特異な個人に率いられたグループです。「思想」の外衣を纏ってはいるもののカルト集団と変わりません。この物語に登場するグループは1974年に三菱重工ビル爆破事件(死者8名)を引き起こした「反日アジア武装戦線(狼)」をモデルにしているようです。架空の指導者「大場」と(狼)の「大道寺」のイメージが重なります。

約半年間にわたる、閉ざされた空間の中での男女の睦合いを描く第2の監禁状態については小池真理子の作品世界そのものです。社会の空気と対比することで、いっそう閉ざされた空間や関係を引き立たせる手法はこれまでの小池作品と同様です。

「あの時代」への郷愁は別としても、一気に読ませてしまう実に面白いエンターテイメント作品でしたが、ラストに主人公が再びあの閉ざされた世界へ戻っていくことに共感は出来ませんでした。男と女の情念の違い?それとも小説家と凡人の発想の違いでしょうか?

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コメント

こんにちは。
この本の書評にTBさせていただきました。

>「反日アジア武装戦線(狼)」をモデルにしているようです

そうだったのですか、私は浅間山荘事件がモデルになっていると思っていました。
官能小説が得意な?小池真理子さんの小説は好きですが、
学生運動というものが盛んだったという時代の匂いが彼女の作品のベースになっているようで、
「あの時代」を歴史でしか知らない私なんぞはとてもひかれます。

投稿: 樹衣子 | 2010年1月11日 (月) 17時21分

樹衣子さん、こんにちは。
TBして頂いたとのことですが、届いていないようのなのでお手数ですが再送信していただけますか?樹衣子さんのブログの関連記事にも辿り着きたいと思っています。

「あの時代」に生きていた僕たち「真面目な新左翼(?)」にとって、連日の爆弾テロや内ゲバに関する報道にはうんざりしていました。浅間山荘グループは銃を、「狼」たちは爆弾を信奉していたようです。いずれにせよ、自滅の道を辿ったことは必然でした。文学の対象とは成り得ても共感の対象とはなりえませんでした。

投稿: YASU47 | 2010年1月11日 (月) 20時46分

こんばんは。
コメントをありがとうございます。
また、弊ブログもご訪問いただけるとのことですが、うまくTBができないようなのでURLをはりました。

http://konstanze466.jugem.jp/?eid=154

>文学の対象とは成り得ても共感の対象とはなりえませんでした。

YASU47さまのご意見が、世論の総括だったのでしょうね。今の時代から定点観測すると、なんだか私なんぞは不思議な現象のように感じるのです。

投稿: 樹衣子 | 2010年1月15日 (金) 22時15分

樹衣子さん
TBは禁止にしている訳ではないのにどうしてでしょうね?こちらからは無事にTB出来たようです。

>私なんぞは不思議な現象のように感じるのです。
「あの時代」はあまりにも遠くなりました。また、運動の渦中ではその世界が全てと思っていたにも拘わらず、世の中では少数派という学生の、そのまた圧倒的な少数派だったのです。

投稿: YASU47 | 2010年1月15日 (金) 22時45分

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