『こうもり』 @新国立劇場
ヨハン・シュトラウスの『こうもり』を新国立劇場で観ました。年越しあるいは新年の定番作品ですね。新国立劇場の舞台はいつもながら、現代的な装いを採り入れながらも奇をてらわないオーソドックスな演出に好感がもてます。片言の日本語を随所に挟み込むことで客先の笑いを誘ったり、ところどころに別作品の旋律を拝借することでオペレッタ特有の「遊び」を楽しむことが出来ました。
例えば、第一幕ではアデーレに用意させる晩餐が「すし、てんぷら、しゃぶしゃぶ」だったり、ロザリンデに言い寄る場面でアルフレードにリゴレットからの「艶っぽいお嬢さんよ」を歌わせた個所ではつい噴き出してしまいました。ただ、日本語の多用も後半にはちょっと辟易です
主役たちは特に可もなく、不可もなくという印象です。ロザリンデ役のノエミ・ナーデルマンはスリムで魅力的な容姿、豊かな表情でまるで歌う女優のような雰囲気でした。アルフレード役の大槻孝志のテノールが魅力的でした。テノール声がロザリンデを狂わせるという筋書きが刷り込まれているせいかもしれませんが・・・。
もともと、感動や感銘を求めるのではなく、その一瞬一瞬を楽しめば良い作品なので構える必要はないのですが、終わった後に若干の物足りなさを感じてしまうのは、この作品には映像盤とはいえ、クライバーとバイエルン歌劇場(1987)による超名演が存在するからなのかもしれません。オペレッタとはいえ、あの溌溂とした、それでいて優雅な雰囲気を醸し出した演奏と舞台の再現を期待することはす恐らく不可能なのでしょう。この作品は映像鑑賞によって感動のハードルが上がってしまった不幸な例かもしれません。
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