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2008年12月17日 (水)

『ドン・ジョヴァンニ』 @新国立劇場

81215giovanni 新国立劇場で久々の生オペラを楽しみました。「ドン・ジョヴァンニ」はすでに馴染み深い作品でしたが、スピーディな演出、美しい舞台、レベルの高い出演者たちにより、とても楽しむことが出来ました。

舞台がヴェネチアとなっていることに最初は戸惑いましたが、違和感はすぐに消え去りました。むしろ仮面舞踏会の場面などはヴェネチアこそが似合うのかもしれません。演出は特に読替えもなく、オーソドックスですが、シャープな舞台美術や色彩と相俟ってスピーディに展開していきます。でも、あの巨大な操り人形は何だったのだろう?大きなチェスの駒も度々登場しましたが、この意図を特に考えることはせず、舞台美術上のアクセントとしてならば特に邪魔なものではありませんでした。

出演者ではドナ・アンナ役のエレーナ・モシュク(S)が素晴らしかったですね。第二幕のアリア「つれない・・・ですって?」は絶品でした。美しいソプラノのピアニシモが会場全体の空間に浸みわたるのです。滅多に体験することの出来ない至福のひと時でした。

この作品は「フィガロ」や「コジ」のようにアンサンブルの妙を聴かせるというよりは、それぞれの歌手が個人技を競い合うという趣があります。その点で舞台の流れが寸断されがちになるのですが、優れた歌手たちが出演する時には次から次へと繰り出される美しい、あるいは軽妙なアリアに耳を奪われます。エルヴィラ役のアガ・ミコライ(S)というのは初めて聞く名前でしたがジョヴァンニに対する葛藤を見事に歌い演じていました。十年後の(^^;)ベッキーを思わせる魅力的な風貌を持っています。

高橋薫子(S)さんのツェルリーナ役はすでに内外で絶賛されているとのことですが、清楚で美しい声と小賢いキャラクターとのアンバランスがツェルリーナの小悪魔的魅力を引き立てていました。ちなみに最優秀助演賞はエルヴィラの侍女でしょう(^^;)。登場時から軽妙な演技で演出に貢献していました。男声陣は省略・・・(^^;)

オケ(東フィル)は序曲や最初のうちは固めに聴こえましたが、後半に行くに従って鋭さが増し、音楽そのものも盛り上がっていきました。二階席から常時眺めるC・トリンクスの指揮ぶりはエネルギッシュで途切れることのないキレの良さを感じさせていました。好感度大です。

最終日でもあったことから、主演者たちが何度もカーテンコールに応えてくれました。良い公演に恵まれたと共にモーツァルトを聴く歓びにたっぷりと浸った数時間でした。

  

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コメント

mixiからきました。
操り人形、レポレロのアリアのあいだ中もぞもぞ動いて、せっかくの「カタログの歌」に集中できませんでした。
上で人形を動かしていたのはドン・ジョヴァンニで(暗くてよく見えなかったけれど、たぶん)、人形はドン・ジョヴァンにが手玉にとった女たちの象徴でしょう。だから、フィナーレでは、操る人のいない人形がぺしゃんこになっていましたね。(と、いうことは、ドン・ジョヴァンニがいてこそ、女たちはいきいきしていられる、とも解釈できます)
白と黒のチェスの駒は、善と悪の象徴でしょう。石像が真っ白な服装をしていたのは、正義の側だから。悪党のドン・ジョヴァンニは黒いシャツを着ていましたね。
人形にしても、チェスの駒にしても、象徴としてわかりやすいことは確かですが、安易すぎるレベル、という感じがしました。

歌手は粒ぞろいで、なかでもドンナ・アンナが出色でしたね。アンサンブルも聴かせました。

投稿: | 2008年12月17日 (水) 12時19分

映さん、
なるほど~、操り人形もチェスの意味も良く理解出来ました。ありがとうございます。上演中は音楽中心でいつも思考を停止しますので意味不明のものはそのままになります(^^;)。読み換えによる現代演出は音楽への集中が妨げられ苦手ですが(例えば、昨年のザルツブルグのドン・ジョヴァンニの映像DVD)、今回の新国は良かったです。

投稿: YASU47 | 2008年12月17日 (水) 15時43分

YASU47さん、こんにちは。
コメント&TB、ありがとうございます。
こちらからもさせていただきますので、よろしくお願いします。

>最優秀助演賞はエルヴィラの侍女
YASU47さんも注目でしたか。私も惹き付けられました。
彼女のお陰で一段と盛り上がったと思います。

私も装置、衣装、小物などの意味は、
直感的に感じる場合は別として、
気にしないことにしています・・

投稿: edc | 2008年12月17日 (水) 18時02分

edcさん、
そうですよね。今回の演出はモーツァルトの音楽と劇そのものへの楽しみをより高めるものだったと思います。演出というのはこうありたいものですね。ただ、可愛過ぎるエルヴィラの侍女には気が散ってしまいましたけど・・・(^^;)。

投稿: YASU47 | 2008年12月17日 (水) 22時08分

yasuさん、こんにちは。
同じ日の観劇でした。
そうそう、エルヴィラの待女、私も気になってました。
一声発して欲しかったくらいですし、カーテンコールにもそのお姿を現してほしかったものです(笑)

とても気持ちいい、1年を締めくくるに相応しいオペラ観劇でした。


投稿: yokochan | 2008年12月19日 (金) 12時20分

yokochanさん、
エルヴィラの侍女・・・。ついついオヤジ目線になってしまいますよね。
keyakiさんのblogでその素性が判明しました。美藤クミさんという若い女優さんでblogに楽屋での話や写真が載っていました。
http://yaplog.jp/mitokumi/
新国常連となるといいですね(^^;)。

投稿: YASU47 | 2008年12月19日 (金) 14時00分

こんばんは。
コメントとTB ありがとうございます。
こちらからもTB返しさせていただきますのでよろしくお願いします。

ドンナ・エルヴィーラの侍女の女優さんよかったですね。バレーの人かしら...なんて思ってましたが、オーディションで選ばれた女優さんだったんですね。

投稿: keyaki | 2008年12月20日 (土) 00時05分

keyakiさん、
エルヴィーラの侍女、そう、私も身のこなしからバレエ関係かと思っていました。でも、バレエの基礎や劇団四季での経験がある方なのですね。僅かな出番にも拘わらず演技指導も徹底していたようで、今回の演出の丁寧さが窺えますよね。

投稿: YASU47 | 2008年12月20日 (土) 10時41分

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» モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」新国立劇場 [雑記帳]
新国立劇場、新演出の「ドン・ジョヴァンニ」です。このオペラは日本語歌唱の市民オペラにはじまって、これで4回目の生鑑賞です。様々の要素が絡み合った結果でしょう。今回が一番良かったと思います。舞台装置、衣装、扮装など、美しくて安心して見ていられました。歌手も合唱団もそれらしくて違和感ゼロ。最初の場面はヴェネチアのようで、ロージー監督の映画を思わせられました。きっとあの映画から着想したに違いない・・? ... [続きを読む]

受信: 2008年12月17日 (水) 18時02分

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新国立劇場オペラ公演「ドン・ジョヴァンニ」を観劇。平日月曜の白昼という大胆なチケ [続きを読む]

受信: 2008年12月19日 (金) 12時21分

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 クリスマスのイルミネーションで美しく飾られた新国立劇場に、新演出の《ドン・ジョヴァンニ》を見に行って来ました。 《ドン・ジョヴァンニ》は、ドン・ジョヴァンニとレポレッロ主従が登場している時は、話しの展開も早く、面白いのですが、あとが、ハ〜イ、アリアですよ〜で、とても長く感じられて、天才モーツァルトには申し訳ないけど、ちとたいくつ。 今回は、新演出だし、知っている歌手さんが三人も出演するし....ということで頑張って見て来ました。結果は、たいくつじゃなかったです。やっぱり新演出だと、それぞれの人物を... [続きを読む]

受信: 2008年12月20日 (土) 00時07分

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