ブリューゲル・『怠け者の天国』
今日の朝刊(日経の文化欄)に俳優のイッセー尾形氏がブリューゲルの「怠け者の天国」という絵を紹介していました。昼下がり、三人の怠け者たちがぼーっと昼寝をしている姿を描いた絵です。曰く、「こんな人間たちをよく描くし、よくぞ没にならないで今まで残っているものだ」、「覇気の無い絵ナンバーワンだ」とけなしながらも、実はとても共感をしているようです。
手元にある画集の解説によると、この三人は、役人、兵士、農民で、怠けて寝ていれば良いだけの「Luikkerland」という村が舞台とのことです。食べ物はすでに調理されていて、ぐーたらしていれば良いだけなのです。これって究極のスローライフ?でも、本当に天国?実は飽食を戒めている絵とか?
良く見ると不可解なものが沢山あります。調理された豚の丸焼きや半分食べられた茹で卵が歩き回っていたり、フェンスがソーセージで出来ていたり、兜を被った人物が口の中に何か落ちてくるのを待っていたり、遠くからスプーンを持った男がプディング(らしい)の山を抜けてやってきたりと不思議さが満載なのです。それらはブリューゲル初期の怪奇画(ボッシュの影響)から抜け出してきた怪物であったり、中期の「ネーデルランドの諺集」や「子供の遊び」で描かれていたような何らかの逸話を現わしているようです。
それにしても、これほど緊張感の感じられない絵も珍しいかもしれません。「絵画」というと、それが古典であれ、近代であれ、現代であれ、具象であれ、抽象であれ、何らかの緊張感をもって作者あるいは絵そのものと向かい合うのが通常ですが、ブリューゲル後期の民衆を描いた作品群には実におおらかで見る者に構える気を起こさせないものが多くあります。その中でも、この作品の脱力度は最たるものですね。
ちなみにブリューゲルへの個人的な思い入れはここにありますのでお暇な方はどうぞ(このHPの更新はいつになるのだ?)。
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コメント
こんにちは、思い入れのページも見せていただきました。私は肝心のウィーン美術史美術館を見ていないのが残念です(二度も旅行していながら)が、ベルリンやプラドなどでの作品も心に残ります。
投稿: ご~けん | 2008年10月16日 (木) 04時48分
ご~けんさん、
ウィーンにはブリューゲルの代表作「雪中の狩人」や「バベルの塔」「子供の遊び」などがあり、いつまで眺めていても飽きません。次のチャンスにはぜひ!ご~けんさんも行かれたブリュッセル王立美術館の作品群も見応えがありますよね。プラドの「死の行進」はいつか生で見たいと思っています。
投稿: YASU47 | 2008年10月16日 (木) 19時25分
川井様
突然ですが、学生時代仙台の「無伴奏」によく行かれたことをお読みしました。少し前に仙台にいらした時に、無伴奏によく似た雰囲気のKleiberにもいかれたとか、私は行ったことがなくて、先日初めて行ってコーヒーを飲んできました。やはり、懐かしい感じがしました。
ところで、12月19日(金)仙台市文学館主催ライブ文学館という催しがあるそうです。小説「無伴奏」の作者小池真理子氏を迎えて朗読や演奏が予定されているそうで、当時の無伴奏の店主木村さん(現在はチェンバロ製作者として活躍)も交えてのイベントになるそうです。
私が持っていた当時の無伴奏の資料も提供しました。
詳しくは11月に入った頃仙台市文学館のHPに出るとのことです。興味をお持ちでしたら覗いてみてはいかがでしょうか。
無伴奏元常連 仙台在住 Imada
投稿: T.Imada | 2008年10月17日 (金) 00時24分
Imada様、
「無伴奏」は懐かしい仙台の思い出の中でも特別な空間の一つでした。12月の催しは、小説にも店にも今だに多くのファンがいるということなのでしょうね。HPは覗いてみることにします(行きたくなってしまいそう)。仙台は先日の音楽祭といい、すっかり音楽の街として定着しましたね。羨ましいことです。
投稿: YASU47 | 2008年10月17日 (金) 09時04分