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2008年10月 6日 (月)

オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』

81005salome  図書館からオスカー・ワイルド全集Vo.3(青土社)を借りてきました。目的は勿論、戯曲「サロメ」です。一時間とかからぬ小作品ですが、読み進む間、R・シュトラウスの音楽が頭の中で鳴り続けます。何せその楽劇の歌詞にはワイルド言葉がそのまま取り入れられているのですから。しかし、その先入観を出来る限り排除しながら読んでみると、当たり前のことですが、R・シュトラウスによって創り上げられた(と、僕らが感じている)サロメ像とは異なったサロメがそこにはいました。

ワイルドのサロメは遥かに幼く、我が儘で勝気な少女です。もともとは福音書によれば10代の(おそらく)、母親に忠実な憂いを帯びた娘ということになっています。ルネッサンスやバロック時代の絵画群もその系譜です。ワイルドは世紀末にかけての他の芸術家たちによるサロメ像の創造的再生をいっそう顕著にしたものとしてこのセンセーショナルな戯曲を書き上げました。

ワイルドのサロメは上述したような我が儘で勝気というだけでなく、自尊心と好奇心に満ちた魅力溢れる、しかも詩的表現を駆使する(詩人ワイルドの作であるから当然なのだが)知的存在でもあるのです(異常ともいえる執念深さはありますが)。

R・シュトラウスは音楽の力でそこに更に凄まじいともいえる情熱と官能のうねりを付け加えました。現在、戯曲「サロメ」が上演されることは滅多になく、舞台といえばもっぱらオペラ「サロメ」です(シュトラウスはオペラとは呼んでいませんが)。一方で、サロメ像はその後、映画や多くの引用等でさらに自己増殖を開始し、いつの間にかシュトラウスの音楽の範疇さえも超えて、すっかりスキャンダラスで常軌を逸した性的倒錯の偏執狂として認知されてしまったようです。

ところで、戯曲「サロメ」がパリで初演されたのは1896年とのことです。1892年に名女優サラ・ベルナールの主演でロンドン上演をする予定だったのですが当局の検閲で上演禁止となってしまいました。サラ・ベルナールは当時すでに50才を超えていたとのことです。

オペラでもシュトラウスは当初、サロメの声にドラマティック・ソプラノを充てました。妙齢のサロメはワイルドの戯曲の中だけの世界にとどまり、舞台でこの特異な主人公を演じるためには演技力や歌唱力に優れた強烈な個性を必要とするようです。この11月のメトロポリタンでの上演では多少年配とはいえ歌唱力と表現力にたけ、かつすでにこの役で定評のあるカリタ・マッティラ(YouTube映像はここ)がサロメを演じます。ライブビューイングへの期待大です。

尚、1894年英訳版の戯曲にはオーブリー・ビアズリーの挿絵がついています(青土版、岩波版でも同様)。ワイルドによる物語はビアズリーの絵とシュトラウスの音楽(1905年初演)によって世界に広がり、かつ様々の増殖を開始したと言えるでしょう。21世紀のサロメ像にはまた新たな展開があるのでしょうか?

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コメント

わあ
ご覧になられたのですね
どうやら オペラのほうは 小説をはなれ
さらに 新しいサロメが 生きているようですね
楽しみです

投稿: | 2008年10月13日 (月) 21時09分

そうなんです。原作が気になったので近くの図書館で借りてきました。オペラでのサロメというのは膨大な演出や舞台の数だけあるのでしょうね。油断をすると勝手な自己変容を遂げてしまいそうです。

投稿: YASU47 | 2008年10月14日 (火) 10時48分

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