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2008年9月15日 (月)

R・シュトラウス『サロメ』・驚異の音楽劇

80915salome 前回の記事でR・シュトラウスの「サロメ」について数行書いた後、たまらずに再びその映像作品(1974UNITEL盤)を鑑賞しました。やっぱり凄い!・・・って、ドラマが、音楽が、そして歌唱と演技が・・・。

実は、R・シュトラウスはこの作品について「オスカー・ワイルドの同名の作品による一幕の劇」と名づけ、「オペラ」とも「楽劇」とも呼んでいません。原作を明示すると共に、その台本から約半分の量をほぼそのまま使用しているとのことです。すなわち、まずは「劇」ありきの作品です。美しいアリアや合唱が散りばめられている訳ではありません。しかし、音楽の力の凄まじさをまざまざと感じさせるのです。中盤まではR・シュトラウス得意の交響詩作品群のように物語を音楽で描写あるいは劇の進行を支えているように聞こえます。しかし、「七つのヴェールの踊り」からヨハナーン(ヨハネ)の生首へ語りかける長いモノローグ、そして「ついにお前に口づけをしたわ!」という恍惚の叫びに至る高揚は劇作品の力に加えたR・シュトラウスの音楽の力そのものによるものです。

さて、以下はWikipediaからの受け売りです。

ユダヤの王女サロメが自ら預言者ヨハネの首を求めるという筋書きはオスカー・ワイルドの戯曲に端を発した19世紀末以来だったのですね。元々、新約聖書のマタイ福音書とマルコ福音書による物語ではサロメは洗礼者ヨハネを憎む母親ヘロディアから、ヘロデ王に対して踊りの褒美として「洗礼者ヨハネの首を所望しなさい」と指示されるのです。以来、中世からルネッサンスにかけて銀の皿の上にヨハネの首を載せたサロメの絵が多く描かれていますが、サロメの表情はいずれも狂気ではなく、どこか憂いを帯びています(ティツィアーノ、ベルゲーテ、カラヴァッジオ、ドルチ等)。福音書に基づくサロメの物語は多くの芸術家たちの創造力を刺激したようです。

それ以前のサロメ像を根底からひっくり返してしまったのがオスカー・ワイルドです(その戯曲についてはここ)。以来、サロメと言えばヨハネに対する愛情の裏返しとしての憎しみ、更には狂気へと至る破滅の物語となりました。尚、下の写真はビアズリーの作によるワイルドの戯曲への挿絵です。

さて、DVDに戻ります。まず、ベーム/ウィーンフィルによる緊張感に溢れた演奏が素晴らしいのです。咆哮したと思えばその直後には官能的な響きに耳を奪われます。サロメ役のテレサ・ストラータス(S)は元々演技力に定評があり、「トラヴィアータ」「道化師」等のオペラ映画作品で主役を務めています。また、ポネル演出の「コシ・ファン・トゥッテ」ではデスピーナ役で大いにコメデインヌぶりも発揮しています。この映像作品ではまだ30代のストラータスによる体当たり演技がヨハナーンへの興味に始まり、拒絶を受けてから狂気と恍惚のラストへと至る一幕の音楽劇の緊張を全く途切れさせません。

手元にはもう一枚の映像盤(1997年ロイヤルオペラLIVE)があります。この作品もサロメ役のキャサリン・マルフィターノ(S)による年令を超越した迫真の演技と熱唱に次第に引き込まれてゆきます。ヨハナーン役のブリン・ターフェル(Bs)の迫力にも圧倒されます。ドホナーニ指揮の音楽も含めて全く緩みも隙もないライヴならではの集中力の漲った舞台です。ただ、ヨハナーンの生首のリアルさには若干辟易とさせられます。

11月のMETの舞台と音楽は果たしてどのように展開するのでしょうか?

   

80915salome_2

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コメント

ほんとに凄い作品だと思います。どちらの映像もそれぞれ魅力的ですね。もうひとつ、同じマルフィターノ・サロメのベルリン・ドイツオペラ1990年も見ごたえ、聴きごたえ満点です。

TBしますので、よろしくお願いします。

投稿: edc | 2008年9月16日 (火) 07時04分

edcさんのblog記事も全て読ませていただきました。ユーイングやもう一つのマルフィターノも是非見てみたいと思います。まずは11月のMETライブビューイングが楽しみです。この難作品にあっても、METならば期待を裏切ることはないでしょう。

投稿: YASU47 | 2008年9月16日 (火) 09時56分

聖書の中では サロメはそんなに描写されておりません

罪を指摘するヨハネをなき者にし良心の咎めから
逃れたいという 母親である女王の思惑が強いです

その中からワイルドが あそこまで官能的で
狂気の世界を見出したことが 驚きです

またそこにビアズリーは輪をかけて
世界を 作り出しているのです

劇 楽しみです 

投稿: lovebabo | 2008年9月17日 (水) 16時21分

lovebaboさん、
そのようですね。二つの福音書に記されているのは母親に従順なサロメだったのですね。中世の絵の表情がうなずけます。今や、サロメといえば強烈な愛憎のの果ての狂気というイメージでしかありません。フィクションが歴史(事実かどうかは分りませんが)を塗り替えてしまったのですね。興味津々です。ビアズリーという画家は今回、初めて知りました。

投稿: YASU47 | 2008年9月17日 (水) 21時41分

せっかくなので
ビアズリーの 画集を お店にもって来ました

サロメの 挿絵も 載っているので
次回よければ ごらんください

お店に置くには 少し 過激なのですが・・

投稿: lovebabo | 2008年9月24日 (水) 19時07分

lovebaboさん、
ビアズリーの絵、とても興味あります。次回カット時あるいはウォーキングの途中に見せていただきますね。

投稿: YASU47 | 2008年9月24日 (水) 23時52分

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» R.シュトラウス「サロメ」1990年 ベルリン・ドイツ・オペラ [雑記帳]
このオペラ、最初に見たのは、フリードリヒ演出の映画版です。でも、「サロメ」というオペラがほんとに面白いと思ったのは、この映像。ヨカナーンを黒人歌手が担当しているので、歌詞の内容とのずれが気になる部分はあります。その辺は、聞かないことにしてもいいと思うほど、魅力的な舞台映像だと思います。 この映像をはじめて見たのは輸入版ビデオでした。テレビでも放送されましたけど、DVDが出ないのが残念と思っていたのですが、外国版がありました。説明によると日本語字幕もあるそうです。... [続きを読む]

受信: 2008年9月16日 (火) 07時04分

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