康楽館@秋田県小坂町
場所は十和田湖から近い秋田県の小坂町にある「康楽館」という、知る人ぞ知る日本最古の芝居小屋です。何故、人口7千人にも満たない地方の小さな町にこのような芝居小屋があるのかというと・・・、ここはかつて銀と銅の鉱山都市として総人口7万人を超え、秋田県第2の都市として繁栄していたのです。「康楽館」は市民や鉱山労働者への娯楽施設として明治43年(1910)に建てられました。その後、鉱山の閉鎖と共に町は寂れ、小屋も昭和45年(1970)には一旦閉鎖されましたが昭和61年(1986)に「まちおこし」の一環として再び公演が開始され今では多くの近隣の常連客や遠方からの観光客が訪れています。およそ一世紀を経た今も現役の芝居小屋として生きているのです。
さて、公演は「下町かぶき組」という大衆演劇集団による人情芝居と演芸ショーの2本立てでした。芝居は裏切られて殺された側室が殿様への恨みを晴らす「化け猫」の物語ですが、これが堂々たるベタの一方で、実にスピーディで現代的な怪談物語になっているのです。ユーモアを交えたアクションシーンも見事です。猫になりきった妖怪の仕草や身のこなしはロイドウェバーのキャッツたち顔負けです(比べるのもヘンだが(^^;))。そして、ショーも含めて何よりも驚かされ、また共感を覚えたのは出演者たちが若いことです。さまざまな劇団で修練を積んでいることが窺えます。客席と共にショーが盛り上がっていく様は芝居小屋だからこそ醸成が可能な一体感ゆえなのでしょう。
「康楽館」の並びには明治38年(1905)に建てられた西洋ルネッサンス風の「鉱山事務所」の巨大で華麗な建物も移築されており、「明治百年通り」と呼ばれる独特の景観を造り上げています。
尚、銅山が閉鎖された現在の小坂町では開発主体の藤田組の後を継いだDOWAホールディングス(旧同和鉱業)により輸入鉱石の精錬と国内廃棄物からのレアメタルの回収が行われています。やはり、かつては亜硫酸ガスによる煙害問題も生じたようですが、足尾のような大規模な鉱毒事件には至らず、森林もアカシアなどの植樹によって甦らせたとのことです。新たにリサイクル産業拠点としての地位を目指し、今年6月には環境相やDOWA、学識経験者、国内NPOなどを迎えて「環境サミットin小坂町」という催しも開催されました。
近代化遺産の建物群、新たなリサイタル拠点、そして芝居小屋と新しい「まちおこし」に挑戦する小坂町にはこれからも注目です。
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