金丸葉子・『シャコンヌの情景』
ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)のヴィオラ奏者、金丸葉子さん(アムステルダム在住)のデビューアルバムがリリースされました。『シャコンヌの情景・ヴィオラによる300年の回顧』という表題が示すように、バッハから現代に至るまでのシャコンヌ演奏の変遷を辿る試みに挑戦されています。納められている楽曲は以下です。
1. J.S.バッハ「シャコンヌ」
2. ヘンデル(ハルヴォルセン編曲)「ヴァイオリンとヴィオラのためのサラバンドと変奏曲」
3. リゲティ「無伴奏ヴィオラソナタ」
4. ビーバー「ロザリオのソナタ」より「パッサカリア」
5. ヘンデル(ハルヴォルセン)「ヴァイオリンとヴィオラのためのパッサカリア
6. 野平一郎「バッハのシャコンヌによる4つヴィオラのためのトランスフォルマシオン
シャコンヌ、サラバンドとその発展形のパッサカリアは僕ら音楽素人には全く区別がつきませんが、元々は16世紀頃にスペイン文化圏で生まれた舞曲が起源であろうと言われています。低音反復が特徴で、代表的な曲といえば、このアルバムの最初にも納められているバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」の終曲に加えて、ベートーヴェンのピアノ曲「創作主題による32の変奏曲」、ブラームスの交響曲第4番」の終楽章等などが良く知られています。
このアルバムではバロック時代からはバッハとヘンデル、ビーバー、近現代からはハルヴォルセン、リゲティ、日本人作曲家からは野平一郎の作品が選ばれています。ヴィオラという楽器は決して派手な存在ではなく、オーケストラの中でもこの楽器が主旋律を主張することは稀です。加えて、このアルバムでは学術的探究も含めた選曲がなされており、決して耳に心地よい響きや旋律ばかりを奏でてくれるわけではありません。しかし、バッハの作品群がそうであるように、じっくりと聴き込むほどに味の出てくる不思議なアルバムとなっています。器楽曲の多くがそうであるように内証的で、楽曲そのものに向き合う緊張感もまた良いものです。
数曲で共演しているのがRCOのコンサートマスター、リヴィヴ・プルナール氏です。昨年、来日して金丸さんとの共演リサイタルを開催しました。金丸さんには今後もRCOやサイトウキネンオーケストラ、諸リサイタルでの活躍にとどまらず、更に録音を重ねてもらいたいものです。
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