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2008年5月 2日 (金)

渡良瀬川流域行(その1)足尾精錬所跡

80501 先日のドキュメント映画、『赤貧洗うがごとき』に触発されて、一泊二日の渡良瀬川流域小旅行に行ってきました。最初に訪れた足尾はまさに「百聞は一見にしかず」でした。足尾といえばトロッコで入る坑道見学コース(銅山観光)が有名ですが、本当に訪ねるべきはそこから更に数キロ遡った「足尾銅精錬所跡」と「松木渓谷」に尽きます。

古河鉱業足尾精錬所が閉鎖されたのは意外と最近の1989年のことです(開業は1884年)。足尾銅山は1971年に閉鎖されましたが輸入鉱石での精錬を続けていたとのことです。現在は写真で見るように無残な廃墟と化していました。閉鎖後20年が経つというのに古河鉱業は何故工場を撤去しないのでしょうか?撤去費用の問題?あるいは環境(公害)遺跡としての保存の動きゆえ?町には「足尾銅山を世界遺産に」という運動もあるようですが、この精錬所跡と松木渓谷こそは、そこから多くを学ぶべき負の環境遺産としてぜひとも残す価値があると思います。

この精錬所から排出された亜硫酸ガスによって周辺の山林は全滅し、今でも赤茶けた山肌がその凄まじい環境破壊力を物語っています。特に、渡良瀬渓谷の上流の松木地区では南風によって渓谷が煙道と化し、大量の有毒ガスに襲われました。40戸、267名の松木村は救助嘆願、訴訟にも拘らず1902年(精錬所操業開始後16年)に廃村となりました。

80501_3 その松木渓谷を入り口から眺めて驚きました。周囲が一面、無人の荒れ果てた山なのです。「日本のグランドキャニオンへようこそ」という観光誘致の看板が立っていましたが悪い冗談としか思えません。一部ではNPOによる植林も進んでいるようですが、まばらです。

こうして周辺が禿げ山となったことにより、大雨の際の洪水と工場からの銅堆積物の流出が重なり、渡良瀬川下流域の鉱毒問題が発生するのです。これまで、足尾鉱毒事件といえば下流の谷中村の滅亡や田中正造の運動が主に採り上げられてきましたが、この松木村での煙害問題こそが最初の被害の出発点だったのです。

一地域の人命や環境の保全よりも国家戦略としての産業や軍事が、また戦後に至っても高度経済成長が躊躇なく優先された時代に比べ、確かに、現代日本においては目に見える形での「公害問題」は激減しました。しかし、一方で今もなお各地で繰り返されているダム建設問題、道路建設問題等々の巨大公共事業と地球環境を併せ考える時、果たして私たちは本当に賢くなったのだろうか?という疑問を持たざるをえないのです。そんな時、この足尾を訪ねて、精錬所跡と松木渓谷の無残な姿を目にすることで何かヒントを得ることが出来るのではないでしょうか。

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コメント

足尾鉱毒事件については高校で多少は教わりましたし、群馬県のその辺りと関わりがあるので、興味深く読ませていただきました。身内の葬儀のとき、お寺で田中正造の墓も偶然見たのですが、その銘文になんとなく違和感がありました。それが何だったか忘れてしまったのですけど・・数年前ですけど、足尾銅山跡の建造物の記録のために次男が出張で行っていたことがあります。詳細な記録を作ったあと、解体するという話だったようなおしゃべりの中でのいい加減な記憶があります。鉱毒被害を実感したそうです。連絡を取る必要があって、携帯に電話したのですが、圏外でつながりませんでした。山深いところなのだと思ったものです。鉱毒事件の全体像と真実は正しく伝えなければならないと思いますが、やはり隠蔽、歪曲されているのですね・・

投稿: edc | 2008年5月 3日 (土) 23時46分

edcさん、
田中正造への違和感は教科書に採り上げられるほどの偉人に祀り上げられてしまていることによるのでしょうか?足尾問題が田中伝説に変節してしまうことは本人こそ望んでいないでしょうに・・・。
精錬所が解体されるのか、そのまま環境遺跡として残されるのかが議論となっているようです。僕は本文にも書いたようにぜひ残してもらい、学校の研修旅行や修学旅行には足尾「銅山」観光で終わるのではなく、精錬所跡と松木渓谷まで足を延ばしてもらいたいと思っています。

投稿: YASU47 | 2008年5月 4日 (日) 08時35分

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