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2008年1月 6日 (日)

山下りん@足利正教会

皆さんは「山下りん」という画家をご存じですか?

西洋画を学ぶため、明治の始めに単身でロシアに渡り、ロシア正教の修道院でイコン(聖像画)の手法を学んだ女性です。西洋画とイコン画との間での葛藤がありましたが、帰国後しばらくしてからイコン制作に集中し、国内各地の正教会に多くの作品が残されています。業績に加えて、その数奇で波乱に満ちた人生ゆえに近年、その存在が見直されています。昨秋にはNHKで、彼女のサンクトペテルブルグ留学時代に焦点を当てた特別番組が放映されました。皆川博子の大作『冬の旅人』のヒロインの前半の人生のモデルにもなっています。

以前から気になる存在でしたので、足利の正教会(正式には「足利ハリストス正教会・主の昇天聖堂」)に出かけ、彼女の作になるイコンを実際に見てきました。この教会には計11枚の作品が飾られています(そのうちの「三位一体図」は奥の至聖所に置かれ原則非公開)。丁度、彼女が学んだ時代のイコンは西洋画法の影響を受けて伝統的な信仰の対象としてのイコンとはかなり異なっています。現在の正教会では再び伝統的なイコンが見直され、山下りんの作品は厳密に言えばイコンではなく、宗教画として扱われています。80104rin

さて、実際の作品を目の前にして、油絵にも拘わらず、その柔らかなタッチに驚かされます。確かにロシア各地の教会で目にした祈りの対象としてのイコンとは異なり、ロシアやヨーロッパの美術館に収蔵されている宗教画の雰囲気に似ています。伝統的なイコンは板に描かれるのですが、彼女の作品はキャンバスに描かれている点も異なります。それにしても、彼女自身はエルミタージュ美術館で模写の勉強を自ら行い、また、そこには在日正教会から皇帝ニコライ2世に贈られた彼女の作品も所蔵されているとのこと(非公開)ですが、ロシアから帰国後の長い年月を経ても、明治の時代にこのような西洋宗教画を描き続けていた人物がいたということに深い感慨を覚えます。

山下りんについては多くのサイトがあります。詳しい生涯や作品リストについては「山下りん(白稟居)」と「山下りん研究会」がお勧めです。尚、「白稟居」というのはりんの生地であり、晩年を過ごした茨城県の笠間市に2006年に開設された資料館です。今回、足利と共に訪れてみたのですが、残念ながら閉館していました。月に数日しか公開されないようですのでまたの機会に訪れたいと思っています。

最後に足利正教会で、閉館中にも拘わらずご親切に内部を案内していただいた清水様にお礼を申し上げたいと思います。

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コメント

はじめまして。
TBありがとうございました。

昨年末は山下りんの絵が見たくて豊橋の教会を訪れました。
日本中に彼女の足跡があるんですね。

「冬の旅人」図書館で探してみます。

新年早々の出会いです。
どうぞよろしくお願いします。

投稿: まりりん | 2008年1月 7日 (月) 08時22分

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします

 
 山下りんは 日本の宗教画家としては
とても有名ですよね

 たしかに いわゆるイコンから想像するものとは
違いますが 
 明治の時代に 女性が今にまで残る
作品を 描き続けられたというのは
それだけで すごいことなのではないかと思います

 実際の 作品を 見たことは無いので
ぜひ 参考にさせていただき 訪れたいと思います

 

投稿: lovebabo | 2008年1月 7日 (月) 21時26分

まりりんさん、
ようこそいらして下さいました。昨年のNHKの特別番組以降、山下りんの絵を目的に各地の正教会を訪ねる人たちが増えているのかもしれませんね。
「冬の旅人」はかなり読み応えがありますよ。特に、ロシアへ渡る経緯やサンクトペテルブルグで西洋画とイコンとの間で葛藤するヒロインは山下りんそのものをモデルにしています。もし、読まれましたらぜひ感想をお聞かせ下さい。
こちらこそ、宜しくお願い致します。

投稿: YASU47 | 2008年1月 7日 (月) 22時05分

lovebaboさん、
今年も宜しくお願い致します。
lovebaboさんのように絵を描かれる人にとって、山下りんは時代の先駆者として特別な存在なのかもしれませんね。千葉の柏や八日市場の正教会にもりんの作品が存在するようです(公開しているかどうか分かりませんが)。機会をみて訪れてみたいと思っています。

投稿: YASU47 | 2008年1月 7日 (月) 22時11分

yasu47さま お早うございます。

遅くなりましたが、まだ松の内ということで

明けましておめでとうございます
今年も宜しくお願いいたします

山下りん、という画家の方、まったく存じ上げませんでした。西洋の絵画は少しは見ていますが、日本の画家の作品はあまり見ておりません。
後でゆっくりと、リンク先を見せていただきます。

私の住んでいる都道府県では、知○選挙期間になっておりまして、これまでテレビなどで「憲法など守らなくてもよい」というか「改正(=改悪 これは私の見解です)すべきだ、原爆を日本も持つべきだ」と、言い続けていた方(司法関係者)が立候補しています。こんな候補者が、首長になるかと思うと、暗然たる気分になります;; そうならないことを願っていますが~。

ちょっと愚痴を新年から書かせていただきました。
申し訳ございません。不穏当、不適切と判断された場合は、削除していただければと思っております。

ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2008年1月11日 (金) 08時53分

YASUさん、TB頂き、ありがとうございました。
足利正教会に行かれたのですね!
私もYASUさんのお陰で、私も山下りんの絵を見せてもらう事ができて、幸せです。
山下りんの絵は、気高く尊く、そして温かいですね。
明治に、このような数奇な一生を送った女性がいたというだけでも奇蹟のようです。
YASUさんは、たくさんの絵をご覧になったのですね。
とても羨ましいですよ。

投稿: ワルツ | 2008年1月11日 (金) 21時59分

rudolfさん、
こちらこそ本年もどうぞ宜しくお願い致します。
私にとって、山下りんは「画家」ではあるものの、歴史に翻弄された彼女の鮮烈で数奇な生き方と重ね合わしてこそ大きな興味の対象となっています。

某府知事選(府は一つ(^^;)?)へのrodolfさんの想いには全面的に共感出来ます。rudolfさんのblogにも書かれていたように、少数派の切り捨てはファシズム以外の何物でもないと思います。

投稿: YASU47 | 2008年1月12日 (土) 11時11分

ワルツさん、ようこそいらっしゃいました。
そもそも山下りんへの興味はワルツさんのblog記事「冬の旅人」が契機でした。りん場合は、強烈な自我をもってロシア国内を生き抜く小説の主人公とは異なり、挫折感を味わったまま帰国しますが、数年後に、突如イコン画(厳密には宗教絵画)の制作に没頭します。これが、信仰心への回帰によるものなのか、諦念によるものなのかに興味を惹かれます。本人は何も語らなかったそうです。実際に優しく穏やかな作品を目にして、ますます疑問が深まります。

投稿: YASU47 | 2008年1月12日 (土) 11時33分

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