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2007年12月 2日 (日)

僕らの町にミサイルがやって来た

71203patriot1127日(金)の未明、我が家の近くの航空自衛隊習志野基地に移動型の地対空誘導ミサイルシステム、パトリオットの搬入が開始されました。明け方3時ということも含め、近隣住民、この基地がまたがる船橋、習志野、八千代の市民には説明がないままの配備であり搬入でした。当局としては、そもそも市民には知らせる必要がない、もし、知らせるとパトリオットの配備反対運動が大きくなったり、搬入が妨害されたりすることを恐れたのでしょうか?結局、少数の報道、百名弱の反対派市民、それらを上回る機動隊員、右翼の街宣車らで騒然とする中、5台のトレーラーによるパトリオットの第一陣が搬入されたとのことです。

さて、このパトリオット、どのような代物かはココを見て頂くとして、要はアメリカと共同開発ならびに共同配備を進めているミサイル防衛(MD)の一環です。今回、配備されたのはPAC3と呼ばれる最新型で、計画によれば、9月の入間基地を皮切りに2007年度内に習志野、武山(横須賀)、霞ヶ浦の首都圏を取り巻く各航空自衛隊基地に配備されるとのことです。

最新鋭の(といっても米軍による試射実験では失敗続き)ミサイルシステムが、首都圏の平和な住宅地域のど真ん中に配備されることには強い違和感を覚えます。いくら防衛目的とはいえ、「ミサイル戦争」に使われる紛れもない強力な破壊兵器が目と鼻の先に配備されたのです。

パトリオット(PAC3)については多くの問題点が指摘されています。

●ミサイル「防衛」システムとの名称であっても、実際には反撃を封じ込めるというアメリカの先制攻撃戦略に組み込まれている。

●アメリカの目的はそもそも米国本土防衛であり、日本の防衛網を盾として使おうというもの。

●探知から発射までの時間が極めて限られることから、侵略の「おそれ」のある場合を想定した「有事法」が発令される以前に自衛隊指揮官による発射を認めている(改訂自衛隊法)。文民統制はどこに?

●パトリオットの移動、訓練等を含めた配備の詳細については米軍の要求により「高度の」情報管理が求められている。国民の知らぬ間にミサイル配備がどんどん進行している。

●住宅地に囲まれた基地がテロの恰好の標的とされる可能性が高まる。

●射程距離は15-20kmであり、実際の使用にあたっては防御すべき対象の近く(国会?皇居?)に向けた道路移動が必要(発射台を含めて30台以上の車両)。また、据え付けには公園等広い敷地も必要であり、訓練時より「軍事行動」が「市民生活」に優先する。

●強力なレーダー装置による電波障害、民間航空機への誤射の可能性も捨てきれない。等々・・・。

北朝鮮によるミサイル実験や核実験の強行が、これらの配備の恰好の理由とされたことは否めません。事実、多くの国民がMDを含めた防衛システムの強化に支持を与えたことも事実でしょう。しかしながら、その後、日本国政府も加わった6カ国協議の中で未だ不十分とはいえ、核放棄に向けた具体的処置に向けた合意がなされています。必要なことは外交努力によってこの「危うい」合意を確実なものにすることであり、相手を挑発することではありません。

MD関連の2007年度予算は1826億円であり、総経費は概略予算の1兆円を遙かに超えるだろうと言われています。未だ実験段階ともいえる、この高度なシステムに巨額の税金をつぎ込むことで結果的に利益を得るのは軍産複合体(そして命を落とすのは一般兵士と市民)であることは、この間の近代戦争の示す通りです。パトリオットシステムはロッキード・マーチン社とレイセオン社の共同開発になるものであり、2008年度以降、ミサイル本体はライセンス契約を受けた三菱重工が生産と納入を行うとのことです。更新を続けるMD開発は無限のプロジェクトであり、納税者の負担と軍需産業の利益は天井知らずということになります。

同時に、動く金が大きいほど、利権に群がる人間が増えることも常です。守屋前次官の例を出すまでもなく、腐敗しきった防衛省にこのような巨額のプロジェクトの取扱いを行わせて良いものでしょうか?北朝鮮やテロ組織の脅威をいたずらに煽ることで利益を得るのは結局誰??

以上、長々と書きましたが、一近隣住民としても、習志野基地へのパトリオット配備には今後も反対の姿勢を明らかにしていきたいと思っています。

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コメント

>実際には反撃を封じ込めるというアメリカの先制攻撃戦略に組み込まれている。

「日本版BMDが大きな影響を齎す国=日本への弾道ミサイル発射を想定している国」
であるから、
「日本版BMDが影響して、アメリカに攻撃される可能性が高まる国」
とは、
「日本にミサイルを発射しかねず、かつ、アメリカに敵視される要素を持っている国」
であるので、そうした国の安全に日本が配慮する必要は無い(と言うか自業自得)。

>●アメリカの目的はそもそも米国本土防衛であり、

日本版BMDは、日本に飛来するミサイルのみ対処可能。
「米国本土防衛」によく効力を発揮するとは思い難い。

>文民統制はどこに?

「軍事的判断のみを要する危急の局面で、無用な政治的手続を排除する」
という点で、この規定は文民統制をより確かにすることが期待できる。

>国民の知らぬ間にミサイル配備がどんどん進行している。

本当に「国民の知らぬ間」なら、基地正門前での「市民団体」との小競り合いは起きない。

>●住宅地に囲まれた基地がテロの恰好の標的とされる可能性が高まる。

軍事的緊張が高まる中で、軍事施設は元から攻撃の対象になる。
パトリオットの有無が攻撃発生の可能性に大きく影響するとは考え難い。

>訓練時より「軍事行動」が「市民生活」に優先する。

「避難訓練は、平時の学校業務に優先する」
と言えるが、それを殊更に問題視して生徒の避難訓練が廃止されたためしは無い。

>●強力なレーダー装置による電波障害、

パトリオットのレーダー車を、常時起動させておく必要は無い。

>民間航空機への誤射の可能性も捨てきれない。

弾道ミサイルの飛来が予想される状況であれば、民間機の往来は規制されると見るのが妥当。

-見事なくらいに全てが「屁理屈」ですね。


>必要なことは外交努力によってこの「危うい」合意を確実なものにすることであり、

「不利な交渉を強いられる-脅される要素を極力排除する」
という点で、暴力行為の対抗策をとることは十分意義があります。

>相手を挑発することではありません。

それは「恫喝外交」を習い性とする国に言ってやってください。
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20080530058.html

>更新を続けるMD開発は無限のプロジェクトであり、納税者の負担と軍需産業の利益は天井知らずということになります。

貴方がお勤めになる企業は、
「状況変化の即応に努力して顧客満足度の持続を図り、末永い取引と収益の持続を目指す」
ということを一切されないのでしょうか。

投稿: stfan | 2008年6月15日 (日) 03時06分

防御を禁じるということは、私たちは憲法9条を守るために死ね、ということですね。

投稿: | 2008年7月26日 (土) 10時29分

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