S・ヴィエラのマーラー交響曲第2番『復活』
パリでセバスチャーノ・ヴィエラによるマーラー2番『復活』の演奏会がありました。サルヴァトーレ・リッピの追悼コンサートとのことです。・・・と、これは発売されたばかりの「のだめ」第19巻の話(^^;)。で、この際折角だから、最近ご無沙汰のマーラーでも聴いてみようかと♪
手元には5種類の『復活』のCDがありました。最初に取り出したのは、初のマーラー体験(当時はLP盤)ですっかりこの演奏が頭の中に刷り込まれてしまった(1)クレンペラー/フィルハーモニア管による1961年の録音です。マーラーから直接の薫陶を受けた大指揮者は、この巨大で変化に富み、独創的かつ雄渾な一大交響曲を更にスケールアップして、圧倒的な様式感に満ちた演奏を聴かせてくれます。フィルハーモニア管の設立者であると共に、最初に音楽プロデューサーとしての地位を確立したと言われているウォルター・レッグがカラヤンに続いてEMIに連続録音を行ったクレンペラーシリーズのひとつです。当時のステレオ録音への積極的な息吹が伝わってくるような雰囲気を持っています。ソプラノにレッグ夫人でもあったエリザベート・シュワルツコップを起用したことが一層の様式感と格調を高めています。
次の(2)ショルティ/CSO盤(1980)は数多くあるこの曲の名盤の中でも代表的なものの一つでしょう。当時、高性能オケの代表ともいえるシカゴ響とのコンビによるマーラー全集は多くのファンを新たに作り出しました。オケの力と録音技術によりマーラーの新しい世界を開拓したといえるでしょう。だからといって力ずくの音響だけが売り物の録音ではありません。骨太でありながら激情に溺れることなく、実に精緻で極上のサウンドによって至福の時間に浸ることが出来ます。
(3)スラットキン/セントルイス交響楽団(1982)は今では忘れ去られている演奏でしょうが、デジタル時代のパイオニアともいえるTELARC社の録音はダイナミクレンジをフルに活用してオーディオマニアたちの垂涎の的でした。この会社はクリーヴランドやセントルイス、シンシナティ等のアメリカの高性能オーケストラを中心に多くの録音を出しました。「音量を大きくするとスピーカーを破損する恐れがあります」という注意書きに釣られて「春祭」やら「1812年」等の管弦楽曲を買ってしまったのは私だけではないでしょう。『復活』の雄渾な音楽もTELARCにとってはうってつけの題材です。演奏そのものはオーソドックスですが音の響きの良さと美しさは今なお色褪せることなく一頭地を抜いています。
(4)小沢/サイトウキネン盤は2000年の東京文化会館におけるライブ盤で、その年のレコードアカデミー賞を受賞しました。サイトウキネン・オーケストラについてはもはや余計な説明は不要でしょう。このマーラー演奏もいかにも小沢らしく明快で歌心に満ち、それでいて緊迫感に溢れています。小沢と楽団員たちが最終章に向けて共に盛り上がっていく様子が表情も含めて目に浮かぶのは非常設型のこのオケならではの特徴かもしれません。
最後が(5)ブーレーズ/ウィーンフィル(2005)による新しい録音です。ブーレーズというとあまりに分析的な演奏と思われがちですが、ここではVPOということもあるのかもしれませんが、精緻な音作りの一方で、たっぷりの高揚感に浸ることも出来ます。そういえば、ブーレーズはバイロイトでワグナーを振ったり、複数のオケでストラヴィンスキーを繰り返し録音したりと、かなり大向こうを張ることもしているのです。このCDを購入したもうひとつの理由はソプラノにクリスティーネ・シェーファーが起用されていることです。出番は多くありませんが、最終楽章の後半で合唱の中から忽然と現れる稟としたソプラノはまさしくシェーファーやシュワルツコップの真骨頂です。
以上、どれもが素晴らしい演奏であり録音です。更に、ワルター、バーンスタイン、アバド、クーベリック、シノーポリ、インバル、ラトルといった世に誉れの高い演奏を加えるならば、『復活』というのは名盤の宝庫であり、まさしく作品そのものがそれらを生み出していると言えるのでしょう。さて、次はバーンスタイン/VPO盤でマーラーの激情に浸ってみることにしましょうか。あるいは千秋とのだめが感動したセバスチャーノ・ヴィエラの演奏もぜひ聴いてみたいものです。
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