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2007年4月22日 (日)

R・シュトラウスの『四つの最後の歌』

私の最も好きな曲のひとつにリヒャルト・シュトラウスの『四つの最後の歌』があります。1948年、シュトラウスの死の前年、84歳のときの作品です。数々の管弦楽曲、オペラ作品である意味、受け狙いの職人的技法を大いに発揮してきた作曲家が最後に静寂と諦念に満ちた奇跡のように美しい曲を書きました。最初にこの曲を聴いたのはもう20年も前のジェシー・ノーマン盤(マズア/ゲヴァントハウス管)で、オケ部分の録音の良さと相俟ってその美しさに耳を奪われました。R・シュトラウスといえば、それまで「ツァラトゥストラ」「ドン・キホーテ」「アルプル交響曲」「英雄の生涯」といった大向こうを唸らせるようなド派手なオーケストラサウンドに浸ることを楽しんできましたが(当時は未だオペラ作品に親しむ以前でした)、それらとはあまりに対照的な世界を描いた内省的で美しい作品に感動したのです。以来、特に意識せずとも、E・シュワルツコップ(セル/ベルリン放響)、B・ヘンドリックス(サヴァリッシュ/フィラデルフィア)、S・ステューダー(シノーポリ/ドレスデン)、L・デラ・カーサ(ベーム/VPO)などのCDが溜まっていきました。

それらの演奏の中でも、シュワルツコップによる明晰かつ感情豊かな表現は素晴らしく、とりわけよる第4曲の「夕映え」では、人生の最終章に感じるであろう寂寥感を高い芸術性をもって歌い上げています。セルのオーケストラはシュワルツコップを格調高くサポートするだけではなく、同時に歌い手との緊張感も漂わせる名演です。

J・ノーマン盤は歌唱スケールの大きさと、その一方での繊細な叙情性で他の盤の追随を許しません。オーケストラの精巧さも図抜けており、美しさでは群を抜いた演奏といえるでしょう。

そして、この曲を録音するのを心待ちにしていたクリスティーネ・シェーファー盤(ティレーマン/ベルリンドイツオペラ管)が新たにコレクションに加わりました。シェーファーについては、これまでも度々書いてきましたが、彼女の美質はやはりドイツリートの世界でこそ最大限に発揮されると感じます。(現代曲での評価もとても高いのですが、個人的にはそのジャンルに壁を感じてしまい何も述べることは出来ません。)70422shaefer

そのシェーファーの「四つの最後の歌」は歌の巧さに加えて、彼女には珍しく、張りのある声とスケールの大きな表現で、枯淡の境地というよりはむしろ生命の豊さを感じさせるものでした。確かにヘッセの詩による第1曲「春」は歓びを歌い、「9月」と「眠りにつくとき」を経て次第に内省の世界に入り、終曲「夕映え」で静謐へと至るのです。ドラマを感じさせるシェーファーによる新たな境地はファンにとってはとても興味深いものでした。ちなみにこのCD2004年のライブ録音です(メジャーによる正式な市販ではありませんので詳細は控えます)。

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2007年4月 8日 (日)

印旛村・吉高の大桜

千葉県の印旛沼に近い吉高というところに樹齢300年以上の一本の巨大な山桜があり、この季節になると多くの見物客で賑わいます。704081 今年は例年に比べて開花が早いようですが、高さ約10メートル、直径約25メートルの扇状に広がった枝から山桜が咲き誇っています。山桜は日本の古来種といわれ、まず花が咲く里桜のソメイヨシノと異なり、葉が先に出るとのことです。写真(本日)を見て分かるように薄桃色の花びらと茶色の葉との取り合わせにソメイヨシノとは違った趣を感じます。木の裾は鮮やかな黄色の菜の花が取り囲んでおり、いっそうの春風景を演出しています。

桜の木に到達するには、県道から15分ほど畑の中を歩きます(休日はほとんど行列状態)。春風、土の匂い、菜の花の香りを楽しみながらの気持ちの良い散歩です。道のあちこちに見物客をあてこんだ地元農家による野菜直売が行われており、それらを一軒一軒覗いていくのも楽しいものです。704082

人間の営みの無自覚が招いた気候変動により、このところ気温が不安定ですが、今年もようやく本物の春が巡ってきました。穏やかな季節の巡りを願わずにはいられません。

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2007年4月 7日 (土)

IPCCによる温暖化報告書

昨日(46日)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書が発表されました。その晩のTVニュースと翌日の新聞で報道されていましたが、松坂大輔の活躍の陰に隠れてしまったようです。

さて、この報告は地球温暖化の現状の深刻さを改めて浮き彫りにしています。シュミレーションによれば、2020年代(あと十数年後!)の気温上昇幅(1990年比)は0.5-1.2度、2050年代は1.0-3.0度、2080年代には1.3-5.3度と予想しており、それぞれの予測被害影響が報告されています。影響はまず、干ばつ、洪水、熱波、感染症の拡大といった形で低緯度に位置する発展途上国に現れると予測されています。海面上昇が大洋上の諸島に与える致命的な影響も深刻です。それが次第に全地球へ破滅的な影響を与えようとしています。70407climate_1

これらが化石燃料の使用に伴う温室効果ガス(主にCO2など)の発生増加によるものであることはすでに疑いの余地はなくなりました。この間、一部の利害を有する国家(米国、ロシア、中国、産油諸国)や産業界からの異論により因果関係の特定と国際協調にブレーキがかかっていましたが、事象の深刻化(米国におけるハリケーン被害の影響等)、大気中のCO2濃度と気温上昇との因果関係の明確化等により、やっと各国によってこの問題が全人類にとっての最緊急課題として認識されたと言えるでしょう(米国は1997年の国連京都会議議定書を未だ批准していませんが)。

産業革命以前の大気中の温室効果ガスはCO2換算で280ppmと言われています。それが現在では430ppm(平均気温1990年比約0.5度の上昇)に増加しました。産業も含めて人間活動と社会発展を持続する上での許容範囲は550ppm1990年比2度の温度上昇)と言われています。この数値が人類にとって死守すべき数値です。

京都議定書での日本の温室効果ガス削減目標は6%1990年比)でした(環境省主導による「チームマイナス6%」として官庁や多くの企業、個人が運動に参加)。昨今の予想を超える深刻さに、今、ヨーロッパ諸国では8%の削減目標を更に20%削減にまで拡大しようとしています。今回のIPCC第4次報告書を契機に削減へ向けた一層の運動の拡大と抑制対策への投資を望むものです。

ところで、このブログの左欄に数ヶ月前から「FoE Japan」のリンクバナーが貼ってあることにお気づきでしょうか?これは世界70ケ国に100万人のサポーターを持つ国際環境NGOFriend of Earth」の日本ネットワークで、私もサポーター会員のひとりです。環境NGONPO)としては他にも「2050」「地球村」「CASA」等、団体としては「Green Peace」「WWF(世界自然保護基金)」等がありますが、ヨーロッパにおけるこうした草の根市民運動の参加者数に比べると圧倒的に少ないのが実情です。皆さんも地球温暖化防止に向けた一歩としてこうしたNPONGOへの参加はいかがですか?

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