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2007年2月 7日 (水)

映画・『ダーウィンの悪夢』

映画「ダーウィンの悪魔」を見ました。「一匹の魚から始まる悪夢のグローバリゼーション」という刺激的な宣伝コピーとは若干趣が異なり、人々へのインタビューと風景映像が淡々と重なるドキュメンタリーです。しかし、惨状への押し付けがましい口調は無くとも、ありのままの描写とインタビューを通じて製作者の意図が十分に伝わってくる映画でした。70206darwin2

アフリカ、タンザニアのヴィクトリア湖(世界で2番目に広い淡水湖)、そこで1950年代にささいな試みによって放流された肉食魚のナイルパーチがそれまで生息していた既存種を駆逐しながら繁殖し、湖を取り巻く環境は一変しました。大量に捕獲されるナイルパーチの漁業と加工業に職を求めて人々が内陸部から集まり、やがてその切り身がヨーロッパに空輸されることにより町はますます発展していきました。しかし、その一方で・・・。

詳しくは直接劇場に足を運ぶか本作品の公式サイトをご覧になって下さい。

自分にとって最も印象的な映像はナイルパーチの切り身が毎日数トン、ヨーロッパ、更には日本へと空輸される一方で捨てられる頭部と骨の残骸の山、そして、それに群がる人々・・・。通常の貧困や衛生といった概念ではとても説明のつかない映像には衝撃を受けました。

この魚はスズキに似ていることから(はるかに巨大ですが)、日本では「白スズキ」としてファミリーレストランや給食の白身魚フライに多く使われているとのことです。私たちが何気なく食している魚フライの裏にある遠い異国での現実とドラマの存在には改めて愕然とせざるをえません。

アフリカにおける開発事例をもうひとつ・・・。これは日本企業に関わる具体例です。

今年の1月24日、スイスで開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)に合わせ、NGOFoEスイス」とNGOBerne Declaration」は日本の大手タイヤメーカー「ブリヂストン」を『最も無責任な企業』に選びました。ブリヂストンは子会社のFirestone社を通じて経営する西アフリカ、リベリアのゴム農園において80年もの間、劣悪な環境で労働者を働かせ、児童労働を含む人権侵害や環境破壊を引き起こしているというものです(要約はココ)。

ブリヂストンといえば日本を代表する大企業であり、そのホームページでは環境保護を会社理念のひとつとして美しい言葉で謳い上げています(ココ)。リベリアのゴム農園問題についてはFirestone社は事実として認めていないということですので一方的な断定は避けねばなりませんが、企業にとっての倫理を含むCSRCorporate Social Responsibility)とは何かということを改めて問われる事例だと思います。企業に身を置く一私人としての自分自身を振り返るも、解決策は未だ見つけられません。

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コメント

「ダーウィンの悪夢」はなかなか考えさせられる映画でしたね。
firestone社の問題はアメリカではけっこう知られてたような
気がしますが、日本では全然ですよね。
資本主義である限り、株主という所有者には大いなる
責任が帰せられるというべきでしょう。
投資家もこういう情報を十分考慮のうえ投資対象を
選ぶべきだと思います。

投稿: こだま | 2007年2月 9日 (金) 15時16分

こだまさん、
とても考えさせる映画の紹介をありがとうございました。
Firestone社の問題は、今回、FoE Japanのニュースで初めて知りました。企業の中にいると、とかく従業員の立場で考えてしまうので株主の責任という視点には気がつきませんでした。なるほど・・・。

投稿: YASU47 | 2007年2月 9日 (金) 23時45分

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» 「ダーウィンの悪夢」ナイルバーチという魚の名前を知る [soramove]
「ダーウィンの悪夢」★★★ 2004年、フランス=オーストリア=ベルギー アフリカのヴィクトリア湖で捕れる豊富な魚は 地元の人の口には入らず、 ヨーロッパや日本に輸出されている。 衛生的にも管理された建物の中で 魚は処理され、飛行機で出荷されている。 ...... [続きを読む]

受信: 2007年2月10日 (土) 11時25分

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