ロシアパワー
「ニューズウィーク日本版」の今週号がロシア特集ということをniftyserve時代からの通信仲間、miss keyさんのblogによって知り、早速購入しました。
特集の割にページ数はそれほど多くはないのですが、それでも今のロシア大都市を覆う消費パワー熱の凄まじさを興味深くレポートしています。一方で、この空前の消費バブル状態がバーレル当り70ドルを越える原油高と膨大な量のガス輸出による、謂わば「油上の楼閣」であることも指摘されています。併せて、内部生産設備への投資に向かわない消費環境、地下マネーの横行による治安の悪化、民族主義者たちによる人種差別犯罪等々の陰の部分の拡大も深刻な状況です。
私自身、仕事を通じ、1976年の初訪ソ以来、50回を越える訪問や滞在によって、ブレジネフ時代以来のそれぞれの歴史の節目に立ち会ってきましたが、今ではかってのソビエト連邦時代にはとても想像出来なかった華やかで賑やかな街や人々の様子には驚かされるばかりです。かってショッピングといえば国営のグム百貨店での長蛇の列と無愛想な店員、レストランに入れば、ウェイトレスがやってくるまで30分、メニューに関わりなく、実際に出されるのは2、3品といった「社会主義的サービス」に辟易とさせられたものです。ビジネスの分野においては融通の利かない官僚体制には何度も泣かされました。それでも、一方ではプライベートでは善意の塊のようなロシア人と深夜でも安全が保証された街によって独特の居心地の良さを感じたものです。
昔と今とどちらが良かったかと言う問題ではありません。時代の流れです。冷戦構造の消滅と政治的諸自由の拡大、ソ連邦構成国の独立が悪かろう筈がありません。いったんはズタズタにされたロシア人たちのプライドも別の形で序々に取り戻されつつあります。但し、この数十年、相も変わらないのが地道な生産設備への投資と整備の怠りです。今も、地方の寂びれ具合と貧困、設備の老朽化は目を覆うばかりです。原油マネーに浮かれたバブルがはじけた時に、この国には再度の試練が訪れることでしょう。
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コメント
同じタイミングで「TIME」もロシアの特集でした。と思ったら先週出た?「エコノミスト」もそうで、沢山ロシアの記事を載せていたので買いました。
>この数十年、相も変わらないのが地道な生産設備への投資と整備の怠りです。
8年前ですが、ロシア人に「日本に行ったら商品が全部日本製で驚いた」と言われてこっちが驚きました。ロシア人は自国で生産することを誇りに思うような文化ではないのだなあ・・と。なまじ資源があるだけに、製造しなければ生きていけない日本人を、偽の豊かさ、と形容する人もいました。考え方が違うんですね。
投稿: LENI | 2006年7月16日 (日) 01時35分
LENIさん、
近くの本屋に寄ってみましたが、すでに「TIME」も「エコノミスト」も店頭から消えていました。
今日から始まったサンクトペテルブルグ・サミットによって特集記事が増えていたのでしょうね。
最近は日本企業の海外拠点化により純日本製品も少なくなってきました。ロシアとは異なった意味で産業の空洞化が進んでいます。
近い将来は、資源もない、産業もない、人口も少ない日本になりつつあります。エネルギーの消費も減って悪いことばかりではありません。
投稿: YASU47 | 2006年7月16日 (日) 19時36分